# 750
『OAMトリオ+マーク・ターナー/now & here』
text by 多田雅範
Karonte KAR7814
Aaron Goldberg (Piano)
Omer Avital (Bass, TablasHindus, Cajon)
Marc Miralta (Drums)
Mark Turner (TenorSax)
1 Faith (Avital) 4:44
2 Night Song (Avital) 5:37
3 Oud to Omer (Goldberg) 10:05
4 Vincent (Avital) 7:33
5 Second Chance (Goldberg) 3:29
6 Lennie Groove (Turner) 7:23
7 Now and Here (Miralta) 7:10
8 Myron’s World (Turner) 9:41
Recorded @Detudi 84, Barcelona, May 10&11, 2003
「わん、つー、うんうん!」でスタートするドキドキなサックスカルテット盤をドサクサにまぎれてご紹介。
都内在住のマーク・ターナー・マニアたちは「OAMトリオのマーク・ターナーとのライブ盤は最高だ!」とクチコミからネットコミ、縦の連絡、横の連絡で、当のライブ盤『Live in Sevilla』は日本全国あちこちの売り場やカートに入荷しては即時「品切れ中」となってしまう状況だ。マドリッドのマイナーレーベル”LOLA!”からのリリースで、いまだ入手できていない現代ジャズ・リスナーも多い。01年のスペインのセビリアでの実況録音盤。
ここに来て03年の彼らのスタジオ録音『now & here』がマーケットに登場することになった。
OAMトリオとは、
オマー・アヴィタル Omer Avital (Bass, TablasHindus, Cajon)、イスラエル出身のベース、演奏もコンポーザー資質も抜群、要注目
アーロン・ゴールドバーグ Aaron Goldberg (Piano) ボストン出身、NYシーン、泣く子も黙る第一線級のピアニスト(らしい)
マーク・ミラルタ Marc Miralta (Drums) スペイン出身のドラム、その叩きは時にトルネードを思わせる
あれだ、このピアノはジョシュア・レッドマン、マーク・ターナーとの共演で90年代にすでに有名なのだそうだ。あ、ほんとだ(CDをチェックするわし)。ドキンちゃんが「聴いてないとは言わせないわよ」とゆうべスゴんだピアニストだ。
たしかに、抜群に巧い!このピアニスト。
と、本来であればアヴィタルのイルラエル・ジャズ・ネットワークの活性につながる埋め込まれた旋律の特質、だとか、豪放なスペインだましいときにトルネードたるミラルタの叩き、を、絶賛してかからなければならないこのレビューの場面、OAMトリオの重要な特質、見せ所か。・・・でも、そんなの、聴いたひとはみんな書くだろ?書くだろうよ。
こんな、かなり悦びにあふれた、異常気象まっただなか、不良馬場で60キロ背負わされてもなおその走りを見せるのか的な、ゴールドバーグ牡6歳相当の落ち着いた大物ぶりに、いやいや戦慄のピアノ・ショウぶり、そんなところに聴きどころを見つけてしまうわたくしなのであった。だってフツーなジャズでのゴールドバーグなんてフツーに巧いだけじゃない?
そりゃあ、さ、『ライブ・イン・セヴィリア』の怒涛の高みと比較するのは酷なハナシじゃないか。それになぜに03年のターナーをあえて今聴くのか、アヴィタルだって現在の活躍するユニットにこそ耳目を集めるべきじゃないか、という野次も聞こえなくもない。たしかにね、ターナーのはなみずズルズルな、おおきなきんたまぶくろをバスローブにズルズルするような狂気は、さすがに聴こえないわよ、スマートに青年将校の肖像画のように吹き切るのよ。6曲目のレニー・トリスターノ全楽曲丸暗記状態のターナーが涼しい顔をして仕込みまくっているぐあいにあたしはこっそりたじたじになっているのよ。
あ!アーロン・ゴールドバーグはカート・ローゼンウィンケルのヴィレッジ・ヴァンガード・ライブ盤21世紀ジャズ傑作『レメディ』、もちろんマーク・ターナーの最高傑作ソロもふんだん、これのピアニストだよ!おれに書かせろ、おれにこそ書かせろ、と、言わんばかりにライナー・ノーツを書かせてもらいながら今気付くなんて!おれも終わってんな。
なに、マーク・ミラルタはこんなにすごいタイコなのにスペインに引っ込んでしまっているのか。まあ、天才は天才を知る理論で言えば、そんなに心配なことではない。いずれまたシーンのトップ連中との盤を聴くことができるだろう。そういえばバティスト・トロティニョンもスペインに行ったらたまにギグすると言っていた。
OAMトリオの音楽の特質は、リーダーでベース奏者のオマー・アヴィタルに大きいことを再度確認しておく。イスラエルでクレツマーチックなコクと郷愁の強い旋律を紡ぎもするコンポーザー。07年のソロ名義作品『Arrival』、ウードも弾くし、ヴォーカルもとる、こちらの作品へのご案内もここでは強く書きとめなければならない。
以上でございます。1曲目、の、ミラルタの叩きが結構怪物ぶりなのですが、ここでの「わん、つー、うんうん!」、と、「1・2・3・4、よろしっくー」でスタートするSKE48のシングルを並べて聴いてうれしいと思っていることは、ついに書くことができなかった。(多田雅範)
追悼特集
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
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シスコ・ブラッドリー
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オスロに学ぶ
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#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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