#  754

『Ed Schuller & The Reunion Trio - Serendipity』
text by Nobu Stowe/須藤伸義


TUTU CD 888 228

Joe Lovano (tenor saxophone)
Ed Schuller (bass)
Paul Motian (drums)

1.26-2 (John Coltrane)/ 2.Conception Vessel (Paul Motian)/ 3.Ba-lue Bolivar Ba-lues-are (Thelonio7.Lonnie’s Lament (John Coltrane)

Recorded Live at “A-Trane” Berlin, Germany, on November 23 1999
Recorded Originally for Deutschlandradio Kultur
Recording Engineer: Christian Fischer
Produced by Peter Wiessmueller & Barbara Hasslauer-Rueger

マル・ウォルドロンp、ジム・ペッパーts、フランソワ・ジャヌーsax、サイモン・ナバトフp他の聴き逃せない作品を発表しているドイツのTUTUレコードから2009年にリリースされた本作を、遅ればせながら紹介したい。最近レビューを書いた、ペリー・ロビンソンcl・トリオ『From A To Z』)にも参加しているエド・シュラー名義の作品だ。進歩的編曲家/バンドリーダーとして高名なガンサー・シュラーの息子である、エド・シュラーbは、ジム・ペッパー、ビル・フリーゼルg及び、本作に参加しているジョー・ロバーノtsと共に、ポール・モチアンdsのクィンテットの一員として『Psalm』(ECM:1981年;ペッパーの代わりにビリー・ドゥリューズ参加)、『Jack of Clubs』(Soul Note:1984年)、『The Story of Maryam』(Soul Note:1984年)、『Misterioso』(Soul Note:1986年)の4作品を80年代に発表している。モチアンが「多分に経済的理由」(シュラー曰く)で、クィンテットをモチアン/ロバーノ/フリーゼルからなるトリオに縮小したため、退団を余儀なくされたシュラーが画策したプロジェクトの1999年、ベルリンにおけるライブ。

一応“リユニオン・トリオ”と銘打っているが、透明な浮遊感のある前衛性が光るモチアンのクィンテット/トリオに比べ、ジャズの伝統にもっと直接根ざした音楽を展開している。色彩感の強いギターを弾くフリーゼルの不参加(契約上の問題らしい)という事実以上に、シュラーのベースが、4ビートを力強く刻む展開が多い事がその原因だと思う。ジョン・コルトレーンts/ss作の2曲が冒頭と最後に収められているが、シンプルなトリオ編成の故か、トレーンの作品より、ソニー・ロリンズtsの『A Night at Village Vanguard』(Blue Note:1957年)を想起した。主流派/前衛派、どっちつかずで「煮え切らなさ」の残るロバーノのサックスは、余り趣味では無いのだが、本作で顕著に聞かれる個性的な曲線美が印象に残るプレイは、確かな実力に裏打ちされたものだ。その辺りが、モチアン他のミュージシャンや、欧米での一般的高評価に繋がっているのだろう。ロバーノの良さを少し分かった様な気分になった。しかし、本作最大の目玉は、御大モチアンの元気なドラミングだろう。ECM他での近作に顕著な、独特の“間”を生かしたプレイが、彼の音楽性の真髄かもしれないが、70−80年代の作品に多く聴く事ができるヴァイタリティーに富む演奏も、また格別な味わいがあると思う。特に、垂直的推進力に彩られたスウィングは、アメリカの若手ドラマーに影響力のあるビル・スチュアートのプレイを「20年程先取りしていた」と個人的に思う。本作では、その様なプレイを、シュラーの柔軟で堅実なベースと共に、大いに楽しむ事ができる。
(Nobu Stowe/須藤伸義)

*残念ながら『Ed Schuller & The Reunion Trio - Serendipity』は、日本での入手が難しいようであるが、TUTUレコードのホームページより通販可能。アマゾン/ディスク・ユニオン他でも、リクエストすれば、入荷の余地があると思う。

**詳細は、以下のホームページで:

TUTU Records (www.tutu-records.com)
Joe Lovano (www.joelovano.com)

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.