# 777
『マイルス・デイヴィス/ビッチェズ・ブリュー・ライヴ』
text by 稲岡邦弥
Sony Legacy SICP-3034 2,520円(税込)
1.Miles Runs The Voodoo Down
2.Sanctuary
3.It’s About That Time/The Theme
4.Directions
5.Bitches Brew
6.It’s About That Time
7.Sanctuary
8.Spanish Key
9.The Theme
*Tr.1~3:1969年7月5日、ニューポート・ジャズ・フェスティバルにおけるライヴ(未発表)
マイルス・デイヴィス(tp)チック・コリア(el-p)デイヴ・ホランド(b)
ジャック・ディジョネット(ds)
*Tr.4~9:1970年8月29日 ワイト島フェスティバルにおけるライヴ
マイルス・デイヴィス(tp)ゲイリー・バーツ(ss,as) チック・コリア(el-p)
キース・ジャレット(org) デイヴ・ホランド(b)ジャック・ディジョネット(ds)
アイアート・モレイラ(perc)
Original recordings produced by Teo Macero
Produced for release by Richard Seidel and Michael Cuscuna
ここのところマイルスのモニュメンタルな周年が続いている。去年が『ビッチェズ・ブリュー』の40周年で、未発表テイクを含むスタジオ版「レガシー・エディション」がリリースされ、今年は、マイルスの生誕85年(1926年5月26日生まれ)、没後20年(1991 年9月28日)ということでライヴ版がリリースされた。「帝王」にしては爽やかな印象のアートワークで、思わず手にしたファンも多いのではないだろうか。しかし、ライヴ演奏であるだけに内容はどちらも熱く、手に汗が滲み出て来るが、編成の大きなワイト島の方がバランスがとれ聴き易いかもしれない。アタマの3曲は、オリジナルの『ビッチェズ・ブリュー』が録音される直前のニューポート・ジャズ・フェスでの演奏で、何と交通渋滞に巻き込まれたウェイン・ショーターを欠いてのカルテット編成である。生真面目なウェインのこと、車の中で冷や汗をかき続けていたに違いない。ステージでは4人が火の出るような演奏を展開している。今までおクラ入りになっていたのはそういう理由によると思われるが、リスナーは久しぶりにマイルスのワン・ホーンをたっぷり聴けるのだから何が幸いするか分からない。それと、1942年生まれのジャック・ディジョネット、この時27才、唖然とするような電光石火のドラミングを展開している。ファズのかかったエレピを叩き付けるチック・コリアのソロも凄い。たとえば、3曲目の<イッツ・アバウト・タイム・ザット・タイム>を聴いて彼らの究極の集中力と想像力に胸を打たれないファンはいないだろう。
4曲目の<ディレクションズ>から最終曲の<ザ・テーマ>まではアルバムがリリースされた直後のイギリス・ワイト島フェスでの演奏。60万人を集めたというロック・フェスでDVDでの映像が目に焼き付いている。キース・ジャレットのドキュメンタリー・ビデオ『アート・オブ・インプロヴィゼーション』でもその一部が紹介されていたので目にしたファンも多いだろう。センターに定位されたデイヴ・ホランドのベース・ギターの音量がブーストされ、左右のチックとキースのキーボードが充分ノイジーかつアブストラクトで(とくに<ビッチェズ・ブリュー>〜<イッツ・アバウト・ザット・タイム>)、ジャックのドラムがフル・パワーになるとバンドがマイルスのトランペットに襲いかかりカオスの渦を現出する。加えてアイアートの雄叫びが上がり、ゲイリーのサックスが突き刺さり、やがてカタストロフィーになだれ込む。この時、バックステージにはジミ・ヘンも控えていたはずで、彼はどのような思いでこの演奏を聴いていたのだろうか。
おクラ入りのテイクのリリースには疑問符を打つものが多いが、このアルバムに関しては絶頂期の演奏が収録されており、2カ所の演奏のコントラストが見事で、サイデルとカスクーナのプロデュースの妙に感心する。(稲岡邦弥)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
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