# 792
『シーネ・エイ/ブルーな予感』
text by 望月由美
ビデオアーツ・ミュージック/バウンディ VACM-7001 ¥2,625(税込) 6月22日発売予定 |
![]() |
Sinne Eeg: Vocal
Jacob Christoffersen:piano
Morten Toftgard ramsbol: bass
Morten Lund: drums
Jesper Riis:trumpet on The Sound of Music
1. ブルーな予感 (Sinne Eeg)
2. ハイウェイ・ワン (Sinne Eeg、Lisa Freeman)
3. ザ・ライティング・オン・ザ・ウォール (Sinne Eeg)
4. ラスト・ライド (Sinne Eeg)
5. グッド・バイ (Gordon Jenkins)
6. ダウン・オン・ウェスト・フーシン・ルー (Sinne Eeg、Lisa Freeman)
7. サウンド・オブ・ミュージック (Richard Rodgers、Oscar HammersteinU)
8. ザ・ストリート・オブ・ベルリン (Sinne Eeg)
9. マイ・フェヴァリット・シングス (Richard Rodgers、Oscar HammersteinU)
10. タイム・トゥ・ゴー (Sinne Eeg)
11. 春の如く(Richard Rodgers、Oscar HammersteinU)日本盤ボーナス・トラック
プロデューサー:シーネ・エイ
録音:2009年12月19、20日
スタジオ:Nilento Studios(スウェーデン、イエテボリ)
エンジニア:Lars Nilsson
デンマークを中心に活躍する美人女性ヴォーカリスト、シーネ・エイの最新作である。彼女のソロ・アルバムとしては5作目となるが、昨年の暮れ頃から輸入盤がCDショップで反響を呼び人気が拡大、確かな手ごたえを確証した輸入元のヴィデオアーツが日本では始めてリリースしたもの。
ビージー・アデール(p)が銀座山野楽器からじわじわ人気を高め、ジャズ・チャート1位になったのと似た日本進出経緯であるが、ビージーがスタンダードのメロディーの美しさを再提示しスタンダードってこんなにお洒落な曲だったんだということを再認識させることによって人気を集めたのに対し、シーネ・エイの場合は自作のオリジナル中心、勿論スタンダードも唄うがその解釈は専ら自らの音楽スタイルに貫かれていてシーネ・エイの個性が溢れている点で新しいし共感が持てる。シーネ・エイはさらっとした爽やかさを漂わせ、それでいてメイン・ストリームのジャズを感じさせるところが新鮮で今の時代に合っている。
ヤコブ・クリストファーセンのスムーズな語り口のピアノに導かれてアルバム・タイトルの(1)<ブルーな予感>が始まる。シーネ・エイのオリジナル。曲もいい、唄もいい、演奏もいい。しっとりとしたスロー・バラードで演奏と唄が溶け合っていて、まるで聴き慣れたスタンダードのように耳に馴染む。先ず、最初の一曲でシーネの魅力にとりつかれる思いである。(2)<ハイウェイ・ワン>では一転、イン・テンポで快調にスイングするといった具合に彼女の唄はどのトラックもストレートなジャズになっている。(6)<ダウン・オン・ウェスト・フーシン・ルー>、(11)<春の如く>など、時にはスキャットも交えるが、決してホーンライクには唄わない。丁寧に歌を、詩を唄いあげる。そこから自然な説得力が生まれている。全11曲中7曲が彼女のオリジナルであるが彼女の音楽に向き合う姿勢がどれを聴いてもジャズを感じさせてくれる。
シーネはオリジナルの他ゴードン・ジェンキンスの(5)<グッド・バイ>とリチャード・ロジャース〜オスカー・ハマースタインU世の曲を3曲採りあげている。とりわけ(9)<マイ・フェヴァリット・シングス>は、ヴォーカリストの試金石のような曲で多くの歌手が名唱を残しているが、シーネのマイ・フェヴァリット・シングスも曲のイメージを大切にしながら軽快にスイングし粋に仕上げていて聴きものである。また、全編に亘って、つかず離れず絶妙な距離感でシーネを刺激するヤコブ・クリストファーセンの洒脱なピアノが光っている。ボーナス・トラックの(11)<春の如く>も快調。
本作を制作したレッド・ドット・ミュージックは、クリス・ミン・ドーキー(b)が全面的にミュージカル・ディレクターを担当、デンマークの誇るビッグ・バンド、DR Big Band をハウス・バンドとしてクリス・ポッター、マイク・スターン、ランディ・ブレッカー、ジェフ・ワッツなど欧米の著名なミュージシャンをフィーチャーした作品群をリリースしている。シーネ・エイもレッド・ドットから既に2枚のアルバムをリリースしており、本作が3枚目になる。
また、本作によりシーネ・エイはデンマークのDanish Music Award“Vocal Jazz Album Of The Year 2010”を受賞している。
シーネ・エイはファースト・アルバム『Sinne Eeg』(COPE RECORDS)をリリースした2003年に来日しているそうだが日本盤が出ていなかったこともあり知る人ぞ知ると云う存在であった。しかし、輸入盤やYouTube等でその美しい容姿とセンシティヴな唄いっぷりに人気も高まってきているという。本作『シーネ・エイ/ブルーな予感』(VideoArts Music)の日本リリースによって大ブレークするポテンシャルを秘めている。(2011年5月 望月由美)
*インタヴュー:http://www.jazztokyo.com/interview/interview097.html
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.