# 795
『Richie Beirach/Impressions of Tokyo〜Ancient future ….』
text by 稲岡邦弥
OutNote OTN009
Richie Beirach piano
1. Haiku-Intro
2. Haiku 1-Baker-San
3. Haiku 2-Butterfly
4. Haiku 3-Cherry Blossom
5. Haiku 4-Takemitsu
6. Haiku 5-Bullet Train
7. Haiku 6-Togashi
8. Ancient Future
9. Lament
10. Haiku 7-Japanese Playground
11. Haiku 8-Kabuki
12. Haiku 9-Zatoichi-Kurosawa
13. Haiku 10-Rock Garden
14. Haiku 11-Earthquake
15. Haiku 12-Shibumi
16. Eyes of my Heart
Recorded by Walter Quintus@CMP Studio, September 17&18,2010
Produced by Jean-Jacques Pussiau
久しぶりにリッチー・バイラークのソロを聴き、そして、堪能した。変わっていない。お馴染みのバイラーク節があちこちから聴こえてくる。47年生まれだから、もう60代も半ば。僕らが、スタン・ゲッツと日本を訪れた初々しいバイラークを目撃してからでもすでに40年近くなる。その間、バイラークはナマで、レコードで、僕らにつねに刺激と愉しみを与えてきてくれた。そして今回もまた。枯れてはいないし、ましてや老いてもいない。
“インプレッションズ・オブ・東京”(『東京点描』と訳されている)。文字通り彼が何度も訪れた東京(日本)の印象が、さまざまなキー・ワードをテーマに綴られていく。シングル・トーンで弾き出される<Haiku-Intro>から<ベイカーさん>へ。ベイカーとはグラミー賞に輝いたエンジニアのデイヴィッド・ベイカー。無二の親友で、富樫雅彦percとのデュオ『TSUNAMI』録音のためにNYから帯同したほどの信頼関係を結んでいた。抑えていた感情が慟哭に変わる。ベイカーは2004年に急逝(http://www.jazztokyo.com/rip/rip-idx.html)。<武満>と結び付けたのもベイカーさんだ。バイラークは武満の主宰する八ヶ岳高原音楽祭に2度招かれ、武満徹の質問に答える形で「ジャズとは何か」をレクチャーしたこともある。むしろジャレットを彷彿させるロマンチックなメロディで彩られる<武満>は武満徹の優しい人間性を反映したものだろう。その武満はかつてバイラークに対し最大級の賛辞を送っている:“そこからは、他の誰からも感じられないような、香気が伝わってくる。ビル・エヴァンスもそうした典雅な芸術家のひとりであった。だがリッチー・バイラークは、エヴァンスよりも、その探究心において克っている”(『リッチー・バイラーク・ソロ・ピアノ・リサイタル〜ライヴ・イン・ジャパン』壽限夢/ライナートートより。武満徹『時間の園丁』所収)。
描写音楽のような文字通りの<Bullet Train=弾丸列車=新幹線>を経て、バイラークが武満に対すると同じ畏敬の念を持ち続けた<富樫>では内省的な響きを聴かせる。97年、富樫雅彦が自身のレーベル「トライアル」を興したときその第1作『フリーダム・ジョイ』制作のためにNYから呼び寄せたのがバイラークだった。ふたりの仲はそれほど親密だった。その富樫も4年前に没した。(http://www.jazztokyo.com/rip/togashi/togashi.html)
歌舞伎の所作を模したような、間とパーカッシヴな演奏、そして激しいスクロールの<kabuki>、大ファンの<Zatoichi-Kurosawa>が大人しいのはいささか意外な感じがする。
ちなみにこのアルバムは、「OWL」レーベルで秀作を数多くものしたプロデューサー、ジャン=ジャック・プショウが新たにオープンしたレーベル「OutNote」の中の“Jazz and the City”というシリーズの1作として企画されたものである。バイラーク・ファン、ピアノ・ファンは聴き逃せない1枚だろう。(稲岡邦弥)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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