#  805

『古澤良治郎/ラスト・レコーディング 第1集〜タケシ』
text by 稲岡邦弥


META花巻/AKETA’s DISK
MHACD 263 2,800円(税込)

古澤良治郎 (ds,vo)
渋谷 毅 (p)
石渡明広 (g)
望月英明 (b)

1. たまには西荻に遊びにきませんか?
2. ゴンベエ
3. グッドバイ・ポーク・パイ・ハット
4. フォーリング・ダウン
5. ボディ・アンド・ソウル

録音:島田正明@アケタの店、2010.10.15
プロデューサー:古澤 学
コ・プロデューサー:古澤 健+明田川荘之
コントリビューション:古澤 祥子

古澤良治郎が突然逝ってしまった。1月12日。虚血性心不全だという。享年65才。コントラバスの佐藤えりかが編集するフリーマガジン『ジャパニーズ・ビート』創刊号のカバー・ストーリーを読んだばかりだった。このアルバムはその直前に古澤のホームグラウンドだった西荻のアケタの店でライブ収録されたもの。不調気味だった古澤を励ますべく、店主の明田川荘之らが中心となって古澤の家族総出で企画したライブだった。家族の絆を確認し、創刊号のインタヴューで思いを吐露し、「もう。これでいいや」と納得してしまったのだろうか(ライナーノートによれば、それに加えるにアケタの店で正月4日間の古澤4DAYSもこなしたとのこと)。
1.2、4は古澤の自作曲。彼はコンポーザーとしても映画や演劇、CMなどに楽曲を提供するなど多面的な活動をしていた。どれも古澤独特の土の匂いのするエスニックな作風である。2、4曲目ではソロも披露する。古澤の体調は万全ではないようだが、共演者が手を緩めることは一切無い。ベースの望月などたしか70年代からの付合いだし、渋谷(p)ともひとかたならぬ関係であるはず。脂の乗り切った石渡(g)など容赦なく攻め立てる。元気をもらった古澤のテンションが上がる。しかし、それでも古澤のドラムがうなりを上げることはない。元来、古澤のドラミングはそういうドラミングなのだ。どんなときでも決してまなじりを決することがない。手数を抑え、リズムにやわらかさが伴う。終曲、しなやかなブラシの<ボディ・アンド・ソウル>で幕を閉じる。
古澤には3人の子供がいた。当夜の演奏はアルバム化にあたり、ライブを企画した長男・健、次男・学それに店主・明田川がプロデュースを担当、第1集はプロデューサー長男・健、第2集は次男・学の名前をとってそれぞれ、「TAKESHI」、「MANABU」とサブ・タイトルが付された。長女の祥子は挨拶文を寄稿している。
終演後、メンバーを紹介する古澤の声が収録されている。ジャケットの表裏には長いあご髭を蓄えた古澤の好々爺然とした写真が。隅から隅まで仲間の暖かい眼差しと家族の固い絆が窺われるたぐいまれな好盤である。唯一、長年にわたって古澤と二人三脚でキャリアを伴走してきたマネジャーの川村年勝の名前が見えないのが寂しい。川村は病を得て札幌に潜んでいる。葬儀には上京し、弔辞を捧げたようだが。(稲岡邦弥)

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