# 828
『SSJオールスターズ/カリフォルニアより愛をこめて』
text by 稲岡邦弥
SSJ/バウンディ XQAM-1803 \2,500 初回限定1,500枚 |
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演奏:
SSJオールスターズ
1. ブルースカイ〜オン・ア・クリア・デイ (スー・レイニー)
2. スウィート・アンド・ラヴリー (アラン・ブロードベント)
3. ストライク・アップ・ザ・バンド (ジョニー・ホリデイ)
4. スカイラーク (レスリー・ルイス)
5. ヒアズ・トゥ・ライフ (カート・ライケンバック)
6. オルフェのサンバ (ダイアン・ハブカ)
7. 上を向いて歩こう (クリスチャン・ジェイコブ)
8. ビューティフル・ラヴ (ティアニー・サットン)
9. ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト (ジム・コックス)
10. ドリーム (ディック・ノエル)
11. アイル・フィール・ア・ソング・カムン・オン (クリス・コナー)
12. ザ・ウェイヴ (フランキー・ランドール)
13. ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン (ピンキー・ウィンターズ)
*日本盤ボーナス・トラック
録音(新録音分):2011年4月〜5月@アンブレラ・メディア・スタジオ、チャッツワース、LA
プロデューサー:ビル・リード
この欄では東日本大震災支援の何作かのチャリティCDを紹介させていただいたが、お手軽に造られたものは1作とてなかった。1作1作にアーチストや制作関係者の想いが込められており、さらにレーベルやアーチストのバックグラウンドが反映されそれぞれが個性的であった。
今回取り上げるのはSSJオールスターズによるチャリティ・アルバム。SSJはSinatra Society of Japan(日本シナトラ協会)で、レアなヴォーカル・アルバムの再発や、新作の制作を積極的に続けており、かつてこの欄でSSJの新作の1枚、『テッド・ローゼンタール/ソー・イン・ラヴ』を紹介させていただいたことがある。
本作は、文字通り、『カリフォルニアより愛をこめて』贈られた1作。カリフォルニアに住むSSJを作品発表の場とするアーチストがこぞって参加、総力を結集してチャリティ・アルバムを創り上げた(クリス・コナーのアーカイヴを除く)。幾たびか日本の土を踏み、日本にも馴染みのアーチストも多く、SSJファンは言うにおよばず、一般のジャズ・ヴォーカル・ファンやウェスト・コースト系のジャズが好きなファンにはこたえられない1枚に違いない。
スー・レイニーの<ブルー・スカイ〜オン・ア・クリア・デイ>に始まり、ピンキー・ウインタースの<ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン>で幕を閉じるまで、燦々と太陽の降り注ぐサン・デッキで、あるいはワイン・グラスを傾けるレストラン・バーで、まさに寛ぎのひとときを過ごす雰囲気。早くかつての平和な憩いの時を取り戻して欲しいと願う彼らの想いが満ち満ちている。曲のタイトルにもさりげなく彼らのメッセージが込められているのが嬉しい が、クロージングの<君は独りぼっちじゃない>はロジャース=ハマースタインの作品だが、サッカーのチャントとして改めて脚光を浴びたことは良く知られている。ここではそれを踏まえて、家族や友人を無くした被災者に向かって
ベテランのピンキーが切々と語りかける。
女性ヴォーカル6曲に男性ヴォーカル4曲、間を縫ってピアノ・ソロが3曲。新録が中心だがなかには1987年録音のクリス・コナーのライヴ・トラックも。アップ・テンポで一気に駆け抜けるクリス。<オルフェのサンバ>の英語ヴァージョンを見事なウクレレの伴奏(ダン・ソーヤー)で唄うダイアン・ハブカ(ウクレレといえば、先々週会ったハワイのサーフ・ロッカー、カラパナからホノルルでフリートウッド・マックやスティーヴ・ウィンウッドらを交えて大規模なチャリティ・コンサートを打ったと聞いたが、日本ではニュースに触れたことがない)、日本通の彼女こそこの企画の発案者だという。クリスチャン・ジェイコブの<上を向いて歩こう>(この曲も大震災をきっかけにあらためて脚光を浴びたのだが)でのアドリブも聴きものだ。
7月3日に先行リリースされたアメリカではロサンゼルスで参加アーチストを中心とするリリース・パーティが行われ、収益は共に現地の日本大使館に届けられたそうである。国内発売は8月3日、初回限定1,500枚は、本欄での紹介が遅れた今、すでにソールド・アウトになっているのだろうか?国内セールスの収益は日本赤十字社へ寄贈されるとのこと。
大震災から半年が経過した。余りにも大きな犠牲を払うことになったが、大地震〜津波〜原発事故が皮肉にも日本の仕組みの不都合をあぶり出す結果も生み出した。復旧・復興はやっと緒に付いたばかりで(あるいは、緒に付きつつある)、国民すべてが手を携えてまだまだ長い距離を歩んで行かねばならない。一方で、世界各国、各地から暖かい手が差し伸べられた。この作品も心のこもった暖かい贈り物のひとつに違いない。(稲岡邦弥)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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