# 835
『クニ三上/ハンプス・ブギ〜ライオネル・ハンプトン』
text by 稲岡邦弥
強烈にスゥイングするので運転中は聴かないでください!
CDの帯に「強烈にスゥイングするので運転中は聴かないでください!」と但し書きがある。NYを拠点に活躍するクニ三上の新作。たいした自信だが、看板に偽りはない。オープナーの<オパス・ワン>。三上が1991年から2002年に94才で亡くなるまで専属ピアニストとして仕えたライオネル・ハンプトン楽団の定番のひとつ。ベースはハンプトン楽団の僚友クリスチャン・フェビアン、ドラムスはカウント・ベイシー楽団やイリノイ・ジャケー楽団で活躍したデヴィッド・ギブソンとそれぞれビッグバンドOBなのだが、なかで一番強烈にドライヴしているのが三上自身。三上は5,6年前から毎年2回ずつ全国ツアーを敢行しているのでそのドライヴ(スゥイングを超えてドライヴと表現する方が相応しいかも)するピアノに触れたファンは多いことだろう。ハンプのナンバーからは他に、<ハンプス・ブギ><フライング・ホーム><真珠の首飾り>。どの曲もハンプのスピリットが乗り移ったかのように快適にスゥイングする。このアルバムはハンプに捧げられているのだが、三上がピアニストとして来日経験のあるデューク・エリントン(<ザ・ムーチ>、<ウォーム・ヴァレー>を始め、カウント・ベイシー(先日亡くなったフランク・フォスターの名曲<シャイニー・ストッキングス>)、グレン・ミラー(<イン・ザ・ムード>)、トミー・ドーシー(<ムーンライト・セレナード>)とお馴染みのビッグバンドの定番で構成されている。演奏は、クインテット、カルテット、トリオと曲により編成が変わるのだが、共通するのは強烈なスゥイング感。なかで、一瞬、ハッとするのは、<ムーンライト・セレナーデ>。種明かしはヤボかもしれないが、<フライング・ホーム>で強烈にジャンプさせたあと、三上がスーツに身を正し、やおらベートーヴェンの<月光ソナタ>を引き出すくだり。ベイシー楽団在籍17年のクラレンス・バンクス(tb)、エリントン楽団のマイケル・ハシム(sax)共にツボを心得た演奏で楽しませる。<ユー・ベター・ゴー・ナウ>のミュートを使ったバンクスのボントロはどこかビリー・ホリデイを彷彿させるし(裏でむせぶハシムのサックスはレスター・ヤングか)、<ウォーム・ヴァレー>で聴かせるハシムのソロにビリー・ストレイホーンを偲ぶファンも多いことだろう。“ジャズはエンターテインメント”というハンプの信念を受け継ぐクニ三上の真骨頂を地で行く快作。今頃、ツアーで元気に全国巡演中のはず。(稲岡邦弥)
*ツアー・スケジュールについてはニュースの項を参照。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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