# 839
『キース・ジャレット/リオ』
text by 丘山万里子
ECM/ユニバーサル UCCE-1129/30(2枚組)3,600円 |
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キース・ジャレット(piano)
Disc 1 :
Part I/ Part II/ Part III/ Part IV/ Part V/ Part VI
Disc 2:
Part VII/ Part VIII/ Part IX/ Part X/ Part XI/ Part XII/ Part XIII/ Part XIV/ Part XV
Recorded @ Theatro Municipal, Rio de Janeiro, Brazil on April 11, 2011
Recording Engineer: Martin Pearson
Executive Producer: Manfred Eicher (ECM 2198/99)
これはドビュッシーへのオマージュ・アルバムではなかろうか
キース・ジャレットの即興によるライブ録音。
ドビュッシーの前奏曲集を聴くようだった。ペダリングとタッチを変えれば、ドビュッシーの『前奏曲集第3巻』です(前奏曲集は第2巻までだけれども)、と言われても納得しただろう。彼の音の扱いをさらに進めてゆけば、こういうアルバムになったんじゃないか、と。
低音のドローンや、リズム・パターンに旋律をからませてゆく手法、エキゾティックなメロディライン、ハーモニクス、あるいは転回音の小気味良さ。これらは、ドビュッシーの前奏曲集だけでなく、彼の種々の曲で使われているものだ。低音のリズム・パターンは、ドビュッシーの『前奏曲集第1巻』の「帆」、低音ドローンは『前奏曲集第2巻』の「枯れ葉」というように。ハーモニクスの扱いも似ているし。などと言えば身も蓋もなかろうが、どうしても私にはそう聴こえてしまう。低音の打ち込みやユニゾンの扱いは「沈める寺」を思わせる。
ともあれ、いくつかを拾ってみよう。CD1の冒頭の一曲は、ファンタスティックに開始、やがてかっきりしたバスの跳躍に中高音でうちこまれる重音の荒削りなタッチ、飛び散る高音と、めまぐるしい回転性が魅力的だ。言ってしまえば、この曲の中に、残りの全曲の要素がすべて含まれていると言っても過言ではあるまい。第2番は低音ドローンの上にユニゾンの波がうねるゆったりした美しさの上に、時折高音の星屑が撒き散らされるのが印象的。第5番の運動性は「交代する3度」に似ている。もちろんテイストは異なっているけれども、音のばらつかせ方と語り口はやっぱりドビュッシー風ではないか。ディスク2の第3番は高音のグリッサンドで開始され、「水の精」を思わせる。やがて左の深々としたアルペジオの上にゆったりとした旋律が流れてゆく。一方、深海の静寂を思わせるドローンに水面の音があわあわと輝く。海を渡る風のようだ。第9番、ユニゾンの間をゆきかう歌は、これ以上ないほどロマンティックで甘く切なく胸に沁みる。そして、最後の切れのよいパターンは「風変わりなラヴィーヌ将軍」のケークウォークそのまま。こっちが本家、と言われればそうだけれども。
これはドビュッシーへのオマージュ・アルバムではなかろうか。そう思って聴くのも一興かも知れない。(丘山万里子)
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