# 846
『エベーヌ弦楽四重奏団/フィクション』
text by 丘山万里子
EMI Music Japan TOCE-90205 2,800円 |
![]() |
編曲+演奏:エベーヌ・カルテット
曲目:「ミルザー」「アマド・ミオ」「ネイチャー・ボーイ」「カム・トゥゲザー」「報われぬ思い」「コーリング・ユー」のイントロを含む2曲、「コルコバード」「ナッシング・パーソナル」「フットプリンツ」「ライラック・ワイン」「スマイル」「いつか王子さまが」「虹の彼方に」「7-29-04 THE DAY OF」(「オーシャンズ12」から)「ストリーツ・オブ・フィラデルフィア」
演奏:エベーヌ・カルテット(vl) ピエール・コロンブ、ガブリエル・ル・マガデュール、(vla) マチュー・ヘルツォ(cell,bas) ラファエル・メルラン(per) リシャール・エリファニー・アルダン、ルス・カサル、ナタリー・デセイ、ステイシー・ケント(song)
録音:sutudio de la glande arme他 2009〜2010
エグゼクティブ・プロデューサー:Alan Lanceron
映画音楽やジャズのスタンダード・ナンバーなどを網羅したエベーヌ・カルテットの1枚。フランスのブローニュ=ビヤン音楽院(パリ近郊)でクラシックを学び、1999年に結成された。2004年のミュンヘン国際コンクールで優勝した経歴を持つ。日本では「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」でその腕前を披露している。
のっけからガツンと来る重奏と音の波立ちからすでに惹き入られる。映画『バブル・フィクション』の冒頭に流れるエキゾティックな旋律と、弦の撥音、ボディを叩く響きとの組み合わせが抜群の『ミザルー』。続く『アマド・ミオ』はヴォーカルにスペインを代表するポップ・シンガー、L・カサルを迎え、ピチカートの上にラテン系の哀愁を帯びたボレロを聴かせる。映画『ギルダ』で使われた曲だ。『ネイチャー・ボーイ』はナット・キング・コールのカヴァーで、vlが達者なソロ。ビートルズの『カム・トゥゲザー』ではチェロに支えられた2台のvlが即興的な演奏を繰り広げる。B.メルドーの『報われぬ思い』や、「バクダッド・カフェ」からの『コーリング・ユー』2曲ではパーカッションR.エリが活躍し、ファンタスティックなシーンを現出。弦のトレモロやピチカートの霞のような静寂も魅力的だ。ジャズ・シンガー、S.ケントがもの憂げに歌うボサノヴァ『コルコバード』。次いでジャズの名曲2つ『ナッシング・パーソナル』『フットプリンツ』のヴァイオリン・ソロのうねるようなラインとドライブ感、パーカッションとのからみが巧み。後者は低音ピチカートとパーカッションにポルタメントのかかったvlがゆるく歌う。弦のトレモロを背景にF.アルダンが歌う『ライラック・ワイン』はその語り口がシャンソンを思わせる。チャップリンの『スマイル』、ディズニーの『いつか王子さまが』では、彼らはなんとコーラスまで担当。『虹の彼方に』を歌うのはクラシック界の歌姫N.デセイ。『7-29-04 THE DAY OF』(「オーシャンズ12」からの弦とパーカッションはファンキーなノリ。最後の『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア』のヴィオラのソロのソフトな歌声にはしびれる。
というふうに、それぞれの楽曲が彼らの手によって斬新な形姿を立ち上がらせる。かっこいいカルテットである。(丘山万里子)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.