#  853

『海野雅威/プレイズ・ジャズ・スタンダード〜ソロ・ピアノ〜』
text by 望月由美


ZZJAPLUS/ハピネット
HMCJ−1009 3,000円(税込)

海野雅威(p)

1. Take The “A” Train (Billy Strayhorn)
2. Have You Met Miss Jones ? (Richard Rodgers)
3. Autumn In New York (Vernon Duke)
4. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill)
5. The First Meeting (Edvard Grieg)
6. The Days of Wine and Rose’s (Henry Mancini)
7. Lush Life (Billy Strayhorn)
8. Blue Wig (Gerry Wiggins)
9. What A Wonderful World (George Douglas-George David Weiss)
10. How Deep Is The Ocean (Irving Berlin)
11. All The Things You Are (Jerome Kern)
12. Amazing Grace〜If I can Help Somebody〜Furusato
(John Newton/Alma Bazel Androzzo/岡野貞一)
13. Sack Full Of Dreams (Gary McFarland- Louis Savary)
14. You Don’t Know What Love is (Don Raye- Gene De Paul)
15. Smile (Charlie Chaplin)

録音:2011年4月23日 N.Y.アヴァター・スタジオ
エンジニア: 鈴木良博
マスタリング:鈴木浩二

 ニューヨークで活躍するピアニスト海野雅威の初のピアノ・ソロ・アルバムである。
 ビリー・ストレイホーンの<A列車で行こう>に始まり、リチャード・ロジャース、ヴァーノン・デューク、ジェローム・カーン等々の旧き佳き時代のスタンダードからジェリー・ウィギンスやゲイリー・マクファーランドなどミュージシャンの書いた美しい曲、またグリークやヘンリー・マンシーニの名曲そして最後にチャーリー・チャップリンの<スマイル>まで15曲、(12)のメドレーを3曲とカウントとすれば全17曲がすべて爽やかでリリカル、斬新な響きを放っており、正統派ピアニスト海野雅威の今の息吹が伝わってくるスタンダード・ソロ・ピアノ集となっている。ここに収められた15曲のスタンダードは殆どの人が耳に馴染んでいる名曲ばかりで、それだけに個性をだすのは難しい曲ばかりともいえるが海野はそのどれもがソフトでしなやか、表情豊かである。(12)のメドレーで小学唱歌<ふるさと>を取り上げているが、3.11から一ヶ月余り、遠くニューヨークで日本を想う海野の心境が伝わってくるようであり心にしみる。レコーディング・データによると海野雅威は極めつきともいえるスタンダード全てを一日で録音している。筆者もピアノ・ソロのレコーディングには何度か携わっているが、ソロ・アルバムの場合、直接聴き手と向き合うコンサートと違ってレコーディングの工程での中では、程よい緊張と寛ぎを繰り返す中で集中力を高め、音楽と向き合うことが求められる。ミュージシャンにとってはその匙加減は大変難しいことであるが、海野雅威は各名曲の美しいメロディーを活かしながらも自然でさりげなく、ゆったりとした寛ぎを漂わせてニューヨークでの自らの心象を紡ぎだしている。スタンダードの名手としてはハンク・ジョーンズやトミー・フラナガンの名前がすぐに想い浮かぶが、海野雅威は1980年東京の生まれ、今年31歳という若さでありながら既にこの巨匠達と肩を並べる、けれん味のない折り目正しいスマートなピアノを弾いている。
 海野雅威は本号が掲載される頃には来日しており11月11日〜11月23日までジミー・コブの「リメンバリング・マイルス〜Tribute Miles Davis」ツアーにピアニストとして参加し、そのあと11月25日から来年の1月3日まで本作「プレイズ・ジャズ・スタンダード〜ソロ・ピアノ」発売記念ライヴ・ツアーを各地で行うとのことである。海野雅威の今の息吹を聴くよい機会になるであろう。(2011年11月 望月由美)

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COLUMN
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#10 Contents
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