#  858

『板橋文夫/Life & Live ~渡良瀬』
text by 稲岡邦弥


Solid Records/ウルトラ・ヴァイブ
DVSOL1015
2,980円(税込)

ハッピー・バースデイ - 序章
ニュー・ジェネレーション - 新世代から
スプリング・デイズ - 音大生活
バック・トゥ・ザ・ルーツ - 帰郷
ホームタウン - もうひとつの故郷
アフリカ・ブラジル - 世界へ
わたらせ - 誕生
わたらせ・アット・渡良瀬 - 終章

板橋文夫 (p)

わたらせ・アット・渡良瀬
1.インプロヴィゼーションPart 1「渡良瀬川は今日も流れる」
2. インプロヴィゼーションPart 2「故郷に帰ったぞー」
3. 足利オン・マイ・マインド
4. にわとりのいたあの頃のふるさとの家
5. うみ
6. 渡良瀬

 好漢・板橋文夫のおそらくは還暦を祝して企画されたのであろう、徹底的に<渡良瀬(わたらせ)>にこだわったドキュメンタリーDVDである。CD(収録曲はDVDとは一部変えてある)も同時リリースされているのだが、ジャズ・ミュージシャンには珍しいDVDをあえて紹介することにした。
 <渡良瀬>とは、ジャズ・ファンにはお馴染みの、板橋のトレードマークになった自作曲である。1982年アルバム『渡良瀬』(日本コロムビア)のなかの1曲として発表されるや、5音階で作られたこのシンプルなジャズ・ワルツが、川が大地を侵蝕していくようにじわじわとファンの間に浸透、いまや行く先々で熱狂を以て迎えられるほどの人気曲になった。僕はつねづね日本のジャズ・ミュージシャンも良くできた自作曲を繰り返し演奏・録音し、自らのスタンダードにすべきと提唱しているのだが、思い付くのは、富樫雅彦の<ワルツ・ステップ>、菊地雅章の<リトル・アビ>、日野皓正の<アローン、アローン・アンド・アローン>など指折り数えるほどである。なかでは板橋の<渡良瀬>は群を抜いた存在だろう。
 板橋文夫(1949~)は国立音大でクラシックを学んでいたのだが、先輩の本田竹広(1945.8.21~2006.1.21)のピアノに打たれてジャズに転向した経歴を持つ。このドキュメンタリーのなかでの圧巻は、民謡歌手の金子友紀を従えて神奈川フィルと協演するヴァージョンだろう。金子の歌唱も素晴らしいがオケを相手にピアノにムチを入れる板橋の迫力には凄まじいものがある。もうひとつの驚きは、故郷・足利の渡良瀬川の河川敷にグランドピアノを持ち出しての野外ヴァージョンだ。まさに“渡良瀬・アット・渡良瀬”を地で行く。板橋はモーニングを着て<渡良瀬>を弾く。
 いまどきこの企画をメイカーに呑ませた監修者・若杉実の腕力にも感服する。若杉が主宰する「渋谷ジャズ維新シリーズ」の最新作。ともあれ、理解ある制作者を持つアーティストは幸せである。(稲岡邦弥)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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