#  861

『Jeff Cosgrove/Motian Sickness “for the Love of Sarah”- The Music of Paul Motian』
text by 多田雅範


Jeff Cosgrove(ds)
John Herbert(b)
Mat Maneri(vla)
Jamie Masefield (mandolin)

1. Dance
2. Conception Vessel
3. The Storyteller
4. From Time to Time
5. The Story of Maryam
6. Mumbo Jumbo
7. Arabesque
8. For the Love of Sarah
9. The Owl of Cranston
10. One Time Out

Recorded February 2011

 乗り物酔い。motion sickness をかけて、motian sicknessモチアン症候群、と題されたポール・モチアン作品集。このCDを入手して、モチアンの容態が良くないときき、ついに死んでしまったのだから、そんな記憶が刻まれた音楽にわたしにはなってしまった、シャレんなってねえだろ。

 そんなことは忘れて、これ、実にいい。ヴィオラとマンドリンの音色の異化効果もあってか、単に作品集という意義を超えてバトンされるモチアン・ミュージックのコアが聴こえるものだ。

 現代ジャズ界の北斗神拳、尊父ジョー・マネリ(サックス)の微分音ジャズを一子相伝するマット・マネリ(ヴィオラ)。モチアンのトリオ2000+Twoで活躍していたし、Winter & WinterからCDも出ているよ、その演奏センスは抜群だ。

 ルーマニアの作曲家ジョルジュ・エネスクをオマージュしたプロジェクト『Enesco Re-imagined』をルシアン・バンと企画したり、フレッド・ハーシュのトリオで弾いていたり、自身のリーダー作『Spiritual Lover』ではブノワ・デルベックを起用したりと、玄人好みのピアニスト、それぞれ音楽言語が異なる、と、センスの目くばせをしあうベーシスト、ジョン・エイベア(彼のサイトは検索しにくい、ハイコレ、いい画面でそ>http://www.johnhebert.com/)。

 このニューヨークの働き盛り、それでもまだ新進扱い、の二人をセレクトしたのはリーダーのジェフ・コスグルーヴ。ワシントン在住のドラマー。ドラマーゆえにモチアンとの共演は果たせぬかな、モチアンのコンポジションを10曲集めてリスペクトだ。奥さんの名前がサラさんで、ちょうどいい曲名のモチアン・ナンバーもあるではないか。取り上げられているナンバーは、すべてリーダー作のタイトル・トラック級の曲ばかり。それにしても、このコスグルーヴさん、モチアン・スピリッツありぃの、じつに巧みである。

 こないだ世界レベルでも最先端にあるギタリストの市野元彦、みんなライブに行って確認すること、渋谷毅・外山明と文字通り最高峰のトリオだってあるんだぜ、の、オリジナル・ナンバーなのに、知らず「お、これはモチアンの曲ではないのか?」と思ったことがあった、本人にきいたらモチアンのコンポジションにも惹かれているとのこと、そう、こういうふうに音楽は継承されてゆくのだ。

 アマゾンでも買えるし、CDベイビー(http://www.cdbaby.com/cd/motiansickness)でも買えるよ!さっき、月光茶房で益子博之さんと現代ジャズ2011年を振り返っていたけど、益子さんも太鼓判を押してますよ、このCD。(多田雅範)
インタヴュー:http://www.jazztokyo.com/interview/interview099.html

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
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#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
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CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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