ナポリ出身のスリボビッツの第３作品『バニ・アヘッド』が、Moon Juneレコードより発表された。前作『ヒューブリス』(http://www.jazztokyo.com/newdisc/605/slivovitz.html) は、７０年代の熱い“地中海ジャズロック”を継承するなかなかの出来栄えだった。本作録音に際し、若干のメンバーチェンジがあり、女性ヴォーカリスト＝ルドヴィッカ・マンツォに代わり、トランペット奏者のチルコ・リッカルディが加入し、ドラマーが、ステファノ・コスタンツォより、サルヴァトーレ・ライノーネに変更している。基本路線は同じだが、ヴォーカル・パートが無くなった分、さらにジャズ寄りになった印象を受ける。

前作は、作曲上の中心人物の二人、ドメニコ・アンガラノのサックスと、マルチェロ・ジャンニーニのギターが、主旋律及びソロを取る割合が高かった。対する本作は、５人もいるリード奏者（ヴァイオリン／ハーモニカ／トランペット／サックス／ギター）をうまく生かしたアレンジが、好印象を与える。印象的なメロディーや、凡地中海／中近東的フレーズ、エキゾチックに屈折したハードなリフ等、色々な要素を巧みに昇華させた楽曲も高評価に値するだろう。

少し難を言えば、演奏に今一つ“吹っ切れ”が足らない事か。込み入ったリズムチェンジや、変拍子をもう少し“自然に流す”様な、余裕が欲しい。そう言った意味では、前任ドラマーで鋭いビート感覚が光っていた、コスタンツォの抜けた穴は、大きいか。

しかし、タイトル曲〈Bani Ahed〉や〈Fat〉、〈Pochio〉他の楽曲の魅力、総合的な音楽性で、十二分に推薦に値する作品だと思う。（Nobu Stowe／須藤伸義）


*『Slivovitz - Bani Ahead』は、アマゾン／ディスク・ユニオン等で購入可能。

**バンド／レーベルの詳細は、以下のホーム・ページで：

SLIVOVITZ (www.slivovitz.net)
MOON JUNE RECORDS (www.moonjune.com)