#  868(アーカイヴ篇)

『航/小窓ノ王〜Tension』
text by Vincenzo Roggero


KOYA/ラッツパック KOYA - 108002

航 piano, vocal
植村昌弘 drums

1. 独標
2. 蜘蛛と花
3. 坂
4. オコジョ
5. あぜ道
6. 足跡
7. Shichi
8. ペテン師Δ♯18 * Bonus Track

2010年9月25日,Studio Dede (東京)にて録音

 奇妙で、オリジナルで、策術にたけた...そう、とても権謀術数の高いアルバムだ。----- (中略)コントラストのアルバム、ということもできよう。曲と曲とのあいだだけではなく、同一のうねりの内部にすら、頭をぐるぐる回されるような位置転換の渦が正面から訪れる。ピアニシモから荒々しい爆発までのめくるめくダイナミズム-----そこでは子守歌が夜中の悪夢に変貌し、熱く官能的なシャッフルはブレヒト的な気質をもつ演劇的な表現主義へと変身する。東洋的な切れ長の目のプログレを栄養素としたような複雑なリズム、マニアックなイタリア・オペラから派生したような雰囲気。

 航のピアニズムは必然的にカメレオン的融合である。アカデミックな素養を背景にした身体に浸み込んだクラシシズムは、驚くべき敏捷さでもって、しかししっかりと動き回る-----バロック的な押し出しの良い豊かさとミニマリズムの間を、力強いクラスターと優美この上ない筆さばきの間を、灼熱のブルー・ノートと揺ら揺らしたフレージングの間を。ヴォーカルまでもがおとぎ話のような魔力であなたを魅了すると同時に、石のように硬質なサウンドで貫き通し、幻想の世界へと連れ去ってしまうであろう。そこは、ミルクと蜜の河が流れる国でありながらも、一度振り返れば冥界が広がっているような場所である。

 植村は長く第一線で活躍してきたドラマーだが、繊細極まりないパートナーシップを見せる。磨かれた美しさのリズミックな構造に風穴を開け、日陰の部分を創り出しながらも、ランプの明かりで意表を突き、必要とあらばどんなロックスターをも青ざめさせるほどの複合リズムを打ってのける。謎に満ちた<A Swindler>(ボーナストラックで、航のヴォーカルとピアノのみ)では、たった4分間のうちにその変幻自在の世界が威風堂々と閉じられる。(ヴィチェンツォ・ロッジェーロ/all about jazz italia 伏谷佳代訳)

関連リンク:http://www.jazztokyo.com/five/five791.html

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.