FIVE by FIVE:JAZZTOKYO

# 876

『チャーリー・ヘイデン＆ハンク・ジョーンズ／カム・サンデイ』
text by 稲岡邦弥

ユニバーサル／DECCA
UCCM-1207　2,500 円（税込）
SHM-CD
（日本盤：ボーナス・トラック1曲収録）

チャーリー・ヘイデン (b)
ハンク・ジョーンズ (p)

1. 主よ、わが手を取り給え
Take My Hand, Precious Lord (Thomas A. Dorsey)
2. ともに喜びすごせ
God Rest Ye Merry, Gentlemen(Traditional)
3. ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイド
Down By The Riverside (Traditional)
4. 家路
Going Home (Traditional)
5. ああうれし、我が身も
Blessed Assurance (Fanny Crosby-Van Alstyne/Phoebe P. Knapp)
6. 天なる神には
It Came Upon A Midnight Clear (Edmund H. Sears/Richard S. Willis)
7. 春の朝　夏の真昼
Bringing In The Sheaves (Knowles Shaw/George A. Minor)
8. 深い河
Deep River (Traditional)
9. オールド・タイム・レリジョン
Give Me That Old Time Religion (Traditional)
10. しずけき祈りの
Sweet Hour of Prayer (William W. Walford/William B. Bradbury)
11. 古い十字架
The Old Rugged Cross (Rev. Geo. Bennard)
12. あなたも見ていたのか
Were You There When They Crucified My Lord? (Traditional)
13. 主よみもとに近づかん
Nearer My God To Thee (Sarah Flower Adams)
14. カム・サンデイ
Come Sunday (Duke Ellington)
15. イン・ザ・ガーデン *
In The Garden (C. Austin Miles)
* 日本盤ボーナス・トラック

録音：2010年2月2＆3日＠シアー・サウンド、NYC

心を尽くした賛美そのものの演奏に胸を熱くする

昨年５月に91才で天寿を全うした名ピアニスト、ハンク・ジョーンズの遺作（最後の録音は本作録音直後の来日中に制作された『ラスト・レコーディング』Village Records）。1995年にベーシスト、チャーリー・ヘイデンとの同じコンビで制作された『スピリチュアル』(Polydor)のいわば続編にあたるもので、スピリチュアルス、賛美歌（#13は日本の教会でも愛唱されている）、民謡（#4の＜家路＞は、ドボルザークが交響曲『新世界』の第２楽章に採用したテーマの原曲）を集めたもの。アメリカを中心に世界で広く歌い継がれた生活（信仰）のなかの歌で、ハンクもチャーリーも歌うようにストレートにメロディを紡ぎ出している。即興も何の衒いも攻防もなく心から流れ出るままに展開している。
ハンクのピアノの一音一音は辛口のキース・ジャレットの褒め言葉(http://www.jazztokyo.com/interview/v61/v61.html)を待つまでもなく、まさに磨き抜かれた珠をころがすように粒立ちが良く、優しいメロディをシングル・トーンで紡ぎ出すに最適である。主に近づかんとするハンクの演奏は心を尽くした賛美そのもので身を寄せるチャーリーの心情に胸を熱くする。
なお、チャーリー・ヘイデン(1937~)は、永年ジャズ界に尽くした功績により今月NEAにより＜ジャズ・マスター＞認定の栄に浴することになっている。（稲岡邦弥）