# 881
『Nathlie Stuzmann/Vivaldi Prima Donna』
text by 嘉吉純夫
DG 476 4304 |
Nathlie Stuzmann. Orfeo 55
Deutsche Grammophon 476 4390
演奏:
Voc & Cond. Nathlie Stuzmann Orfeo 55
Violons1/ViolinⅠ:Concertino, ViolonⅡ/ViolinⅡ, Alti/Viola, Violoncelles/Cello
Contrebasses/Doble-bass,Théorbe/Theorbo, Clavecin/Harpsichord,
Flûte/Flute, Haubois/Oboe, Basson/Basoon, Mandoline/Mandolin,
Cors/French horn, Diapazon 415 Valotti
曲目:
Agitata infido flatu, Io sento in questo seno, La
Gloria del mio sanque ,Sento in seno ch’in
pioggia di lagrime, Con questo ferro indegno,
Gemo in un punto efremo, Del goder la bella
spene, Sorte,che m’invitasti,Ho nel petto un cor
si forte, Lascia almen che ti consegni, Sovvente il
sole,Cor mio che prigion sei, Con la face di Megera,
Vincerà l’aspro mio fato, Transit aetas, L’innocenza
sfortunata,Cara gioia e bel diletto他
録音:2010年9月@ l’Arsenal de Metz, France
純正のコントラルトで聴ける珍しいヴィヴァルディのオペラ・アリア集
純正のコントラルトで聴ける珍しいヴィヴァルディのオペラ・アリア集。昨今、この作曲家の知らざれるオペラの発掘・全曲録音がブームのごとき様相を呈しており、それにともなってこの種のアルバムも数多く現われてきているが、真正のアルト歌手によるものは稀少であって、その上24トラック中実に9トラックが世界初録音というのが古楽ファンの心を踊らせる。しかも、既出のヘンデルのオペラ・アリア集、モーツアルトの初期オペラ・アリア集などのアルバムとは異なり、今回は、シュトゥッツマンみずからが創設したアンサンブル「オルフェオ55」を自身が指揮しての快演である。指揮棒を握りながら歌うことの功罪はさておき、本盤を一貫する歌と楽器の間の親密なやり取りと息づかいには、まさにバロック・オペラの心髄を実感させるものがある。
実際、彼女の表現力とヴィヴァルディの曲趣との相性は抜群である。半音階的な快速進行の中に立ち現れる暗い情念(トラック1)、テオルボを引き立て役に切々と歌い上げられる -- そのままヘンデルの『リナルド』の有名なアリア「Lascia ch’io pianga」に通じるような -- 哀愁の情感(トラック3)、さらには、マンドリンのオブリガートをともなってまるでドン・ジョヴァンニの誘惑のように響く調べ(トラック21)、そして筆者が〈ヴェネツィア的憂鬱〉と呼ぶところの、あてのない、ただひたすらに気だるい情緒の波間に浮き沈みする9分35秒(トラック14)・・・・・・。
低音域の女声に無比の快感を覚える筆者のような性癖の持ち主の方々には、あるいは、ヴィヴァルディの音楽に潜む多様性と技の巧みに気づきはじめた人々には、特にお薦めのアルバムである。今や沈みゆく世界遺産となった水の都ヴェネツィア、そこに生きたヴィヴァルディがかつて味わったであろう夕暮れの風の感触を想起しながら、「アドリア海の女王」の挽歌として聴きたい。(嘉吉純夫)
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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#10 Contents
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