見事なまでに自然に調和する瞑想と規律

収録曲の「Sunrise」と「End of Day」という言葉にかければ、アルバムの全体の印象は、修道院のような穏やかな1日に等しい。だが、それはその修道院を庭先から眺めた時のこと。屋内に一歩入れば、突き詰めたような濃密な時間が流れている。その時間感覚を定義づけているのは、菊地雅章の内的なピアノであり、トーマス・モーガンのベースは、ピアノの余韻を当意即妙に引き受けながら、同じ時間に溶け込んでいく。おそらく、ドラムスがポール・モティアンでなければ、もっと自己完結的な世界に収斂したことだろう。しかし、モティアンは、菊地とはまた異なる、より客観的な時間を刻むことで、菊地のピアノを別の次元に浮かび上がらせる。修道院の喩えを繰り返せば、瞑想と規律。その二つがこれほどまでに自然に調和するのは、厳しい荒れ野や官能の沃野すべてを歩んだ経験があってのことに違いない。こうしたアルバムが重ねられた先には何が見えてくるのか。そのことを知りたいと思っても、もはや叶わぬ夢となった。（相原穣）