# 892
『Ivo Perelman/Family Ties』
text by 伏谷佳代
Leo CD LR630 | ![]() |
イヴォ・ペレルマン (tenor sax,kazoo,mouthpiece)
ジョー・モリス(bass)
ジェラルド・クリーバー(drums)
1. Family Ties
2. The imitation of the rose
3. Love
4. Preciousness
5. Mystery in Sao Cristvao
6. The buffalo
録音:ジム・クロース(Jim Clouse)@パークウェスト・スタジオ、NY、2011年11月
プロデューサーイヴォ・ペレルマン/レオ・フェイジン(Leo Feigin)
カヴァー・デザイン:イヴォ・ペレルマン
あらゆるフォーム差が消え、本質のみが迫る世界
のっけからカズーが鋭く切り込む。身体に沁みついた「うた」がストレートに満ちる。アルバム・タイトル曲でもある冒頭の<Family Ties>で「買い」だ。イヴォ・ペレルマン(Ivo Perelman)はサンパウロ生まれだが、その音からブラジル人である必然を感じることは薄い。彼にいわせれば、いわゆるフリー・フォームに至っては彼の地は不毛であったという。1989年のデビュー以来、リーダー作は30作以上、すべてがインプロヴィゼーションである。ジョー・モリス(Joe Morris; b)とジェラルド・クリーバー(Gerald Cleaver; ds)という気心知れた剛腕が固める本作も、路線としては前作『The Hour of The Star』(Leo:2011)同様、ブラジル人女性作家であるClarice Lispector(クラリス・リスペクトア)の同名小説に拠っている。母国「ブラジル」とのコネクションを感じるのは唯一この点だ。独自に絡み合うテクスト性と心理描写に長けたこの作家に多大なるオマージュを捧げていることには違いないが、その世界を音で再現しようという試みからは遠い。しかし、人生そのものが文字表現よりはるかに強靭で、理屈の追随をゆるさぬものだという境地は、実は作家が一番描きたかったことのひとつではないか。それを地で行くのがペレルマンの音であり、異なる表現媒体の思惑は幸福な合致を遂げる。語りたい本質の一致が、フォームの差異云々を超える。これは曲のなかのインタープレイで十全に実証されていることであり、3人がイーヴンに自己を出し切ることが、必ずしも出される音量の総和に比例しない。デュオのような音配分あり、影のような半付随の蛇行あり、当然沈黙もある。個と個のダイアローグのシフト、継ぎ目なく連結される音の凹凸の綾。それらは弛緩し、張り詰め、立ち昇っては消失する。呼吸し、筋肉がうごくという生命活動そのもののスペクタクル。野太くも孤高に薫りたつ、成熟した低音の威力を堪能できる1枚だ。長大な曲でのスタミナの持続、締めのブルース<The Buffalo>にも貫禄あり(伏谷佳代/Kayo Fushiya)。
【関連リンク】
http://www.ivoperelman.com/
http://www.joe-morris.com/
http://www.geraldcleaver.com/
http://www.leorecords.com/?m=select&id=CD_LR_630
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.