# 894
『ナタリー・デセイ/ドビュッシー歌曲集〜「月の光」』
text by 大木正純
ヴァージン・クラシックス 2,800円 | ![]() |
演奏者:
ナタリー・デセイ(sop)、フィリップ・カサール(pf)、カリーヌ・デエー(ms)、パリ青年合唱団(指揮:アンリ・シャレ)、カトリーヌ・ミシェル(hp)
曲目 :(ドビュッシー)
1. 星の輝く夜
2. パントマイム
3. 月の光
4. ピエロ
5. 現れ
6. ひそやかに
7. 艶なる宴
8. ロマンス/霧のように消える魂
9. 鐘
10. 中国風のロンデル
11. 波・椰子・砂
12. アリエルの恋歌
13. 未練
14. 海に落ちた水夫
15. 死化粧
16. 弓
17. ロマンス
18. 妖精たち
19. 選ばれた乙女
録音場所:コロンヌ劇場(パリ)
録音日時:2011年11月12〜13日、22〜25日
プロデューサー:エティエンヌ・コラール
エンジニア:フレデリク・ブリアン
オペラ界の大スターが、キャリアの終盤ではなくれっきとしたその全盛期に、同時に歌曲の優れた歌い手でもあるというケースはかなり珍しい。同じ声楽でも、ある意味では世界が違うと言えば違うのだ。往年のフィッシャー=ディースカウやシュヴァルツコプフといった巨人たちは、例外中の例外と言うべきだろう。
ナタリー・デセイがレコーディングしたドビュッシーの歌曲集を聴いて、もしかしたら彼女も、その稀な存在となりうるかも知れない、と思った次第。ここでは珠玉のようなフランス語歌曲の数々(18曲)に、豊かなエスプリや女のなまめかしい情感、さらにはアンニュイや虚無まで、こまやかな心の機微がとりどりに刻み込まれて、聴き手を魅了する。もちろん、デセイがオペラで大喝采を浴びるのは、類い希なコロラトゥーラの超絶技巧や持ち前のいきいきしたキャラクターばかりでなく、実はこうした高度な歌唱力の賜物でもあるのだろうが。
収録歌曲のうち4曲(海に落ちた水夫、弓、ロマンス、妖精たち)は、ドビュッシーがまだパリ音楽院の学生だったころの未発表作品で、これが世界初録音とのこと。しかもそれらに拙い作はひとつとしてなく、ルコント・ド・リールの詩による「妖精たち」のような、歌曲としては破格の規模(演奏時間7分超)を持つ力作も含まれる。ドビュッシー生誕150周年のアニヴァーサリー・イヤーにふさわしい、話題性満点の1枚である。
18曲の歌曲のほか、最後に名前は良く知られているがその割りには聴く機会の少ない、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、合唱と管弦楽(ここではピアノ)のための「選ばれた乙女」が収められている。これがまた、妖しくも美しい。(大木正純)
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