#  899

『高柳昌行|ペーター・コヴァルト|翠川敬基/即興と衝突〜Encounter and Improvisation』
text by 稲岡邦弥


モービス/地底レコード
MC-10017 2,625円(税込)
4月15日発売予定

高柳昌行(g, effect, etc)
ペーター・コヴァルト(b)
翠川敬基(cello)

1. 衝突と即興 44分

Recorded at Studio 200 池袋西武、1983年4月29日
プロデューサー:副島輝人(Mobys レコード)

闘う知将、あるいは日本のフリージャズの生き証人、日本のフリージャズを創り、育て、聴かせ、書き、ドキュメントし、海外に紹介、あるいは海外から招聘し日本のフリージャズとケミストリーを起こし、とこれだけのことを倦(う)まず弛(たゆ)まずほとんどひとりで実践し、傘寿(さんじゅ=80歳)を迎えた今なお矍鑠(かくしゃく)として活動を続けている、その人の名は、副島輝人。その副島輝人が日本のフリージャズがもっとも創造的であった70年代/80年代にドキュメントした音源をアーカイヴ・シリーズとして氏のパーソナル・レーベル「モービス」を地底レコード内に復活させ、順次CDとして公開していくという。聞き捨てならぬ大英断である。
これは、氏が1983年、池袋のスタジオ200のキュレイターとして1年間、「第3回インスピレーション&パワー」として企画制作したなかの一夜、ドイツからペーター・コヴァルト(1944.4.21〜2002.9.21)を迎えた高柳昌行(1932.12.22〜1991.6.23)と翠川敬基(1949.5.10〜)のストリングス・トリオによる即興的な出会いの記録である。三者がどこまでもストイックに、とくに高柳はギタリストであることを拒否するかのように最小限の音を音のエッセンスとして使い、つぶやいていく。多弁な翠川ではあるがやはりその音は装いを排した生身の音である。コヴァルトもまた強靭な意志の力をダイレクトに伝える楽器そのものの音。三者はどこまでも純に心を開いて生身を見せ合う。その音は生身の音が空気に触れてひりひり痛みを伴うほど。それぞれが意図的に交わるシーンは見られないが、三者が発する音が醸し出す音世界ははてしなく鋭角的である。
演奏終了後、キュレイターの副島が「この演奏ははたしてジャズといえるであろうか?」との問いを聴衆に投げかけたというが(副島らしくない問いだが)、この問いは彼らの演奏に意表を衝かれた副島の戸惑いを表している。ジャズに「グルーヴ」を必須と考えるならこの音楽はジャズではないが、「インプロヴィゼーション」をジャズの身上と考えるなら、この音楽はジャズ以外のなにものでもないことはいうまでもないだろう。(稲岡邦弥)

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