# 901
『北浪良佳/LOVE ME TENDER』
text by 望月由美
AIRPLANE LABEL APX1008 2,500円(税込) |
北浪良佳 (vo)
林正樹(p)
馬場孝喜(g)
時安吉宏(b)
佐藤英宣(ds)
鈴木孝紀(cl on 2)
1. I Still Haven’t Found What I’m Looking For (U2、Bono)
2. Moon River(Henry Mancini、Johnny Mercer)
3. Love Me Tender(Vera Matson&Elvis Presley)
4. Love In The Air(北浪良佳)
5. マチノヒト(北浪良佳)
6. ヒカルミチ(北浪良佳)
7. Take a Bow(Babyface&Madonna )
8. The Rose(Amanda McBroom)
9. Smile(Charles Chaplin、John Turner&Geoffrey Parsons)
プロデユーサー:北浪良佳
録音:2011年7月19、20、21日
スタジオ:富士通テン本社 スタジオf(フォルテ)、神戸
エンジニア:万波幸治
個性的な曲の解釈と豊かな声量、そしてなんといっても、詩、言葉を大切にする北浪良佳の魅力がじわっと伝わってくる。第3作目にあたる『Love Me Tender』(APX1008)は前作『SONGS』(VACV-1052)での溌剌としたひたむきさに加えて肩の力の抜けた安らぎが加わり表現の幅が広がってきた。
今回の作品は2007年来の北浪良佳の関西での音楽仲間YBTS(良佳、馬場、時安、佐藤)に林正樹がピアニストとして加わったもので、(g)、(b)、(ds)プラス(p)というシンプルな編成が北浪の歌声を一層ひきたてている。
普段、よく歌っているレパートリーの中から選んだというがU2やプレスリー、マドンナの曲からスタンダードまで幅広い選曲が、ジャンルにこだわらないで自分の好きな曲を歌ってきた北浪らしい。とりわけ今回の作品で注目すべき点は自作曲の3曲で、そのどれもが明快な語り口で北浪の今の心情を素直に表出している点である。(4)<Love In The Air>は阪神淡路大震災を経験した北浪が東日本大震災をうけて林正樹のピアノとのデュオで思いを綴っている。北浪が得意とする武満ソングのように深く胸を打つ。北浪は(6)<ヒカルミチ>でもギターの馬場孝喜とのデュオで自ら書いた詩を曲にのせて歌うことの楽しさを語りかけているようである。またマンシーニの(2)<Moon River>では関西のクラリネット奏者、鈴木孝紀が加わってオレゴンのようなクラシカルな牧歌調のイメージを醸し出し面白い効果をあげている。ここで北浪ははじめ日本語で唄い、途中クラの間奏をはさんで英語で歌っているが日本語から英語への切り替えが自然で違和感なく聴けるのは北浪の発声、歌唱力の確かさであろう。
(6)をのぞいて林正樹が全曲アレンジを担当しているが、シンプルに音数をおさえた柔らかなサウンドが北浪に寛ぎを与えたようで全曲にわたってリラックスした北浪良佳が等身大で描かれている。
今回のアルバム『Love Me Tender』(APX1008)はビデオアーツから独立した北浪良佳が自らプロデュースし「Airplane Label」に販売を委託したもので、前作の『SONGS』から2年というこの時期にしか創れないものを録りたい、との思いに駆られて故郷の神戸で自主制作にふみきった。ふるさと神戸の空気は北浪に居心地の良い落ち着きを与えてくれたようで、これまでは持ち前の豊かな声を活かして器楽のように歌うことで存在感を際立たせていた北浪だが、ここでは簡潔に詩のもつ意味、メロディーの美しさをストレートにうったえて新境地に一歩踏み込んでいる。そして、なによりも歌う喜びが伝わってくるのがいい。
北浪良佳はアルバム『Love Me Tender』(APX1008)の発売を記念して4月12日から「NEW CD発売記念ツアー」を行う。多くの人に彼女の思いが伝わることを期待したい。(2012年4月、望月由美)
☆NEW CD発売記念ツアー
(12〜15日会場にてサイン入りCDの先行発売あり!)
4/12(Thu)名古屋Jazz in Lovely
4/13(Fri)大阪Mr.Kelly's
4/14(Sat)松江Birthday(Trio With 林正樹P,馬場孝喜gt)
4/15(Sun)茨木Alnico(Duo with 馬場孝喜gt)
4/19(Thu)神戸Satin Doll KOBE
4/27(Fri)渋谷JZ Brat
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.