# 914
『Joe Farnsworth featuring Eric Alexander/SUPER PRIME TIME』
text by 望月由美
Eighty-Eight’s/SONY Hybrid Disc(CD&SACD) VRCL-18852 3,150円 |
ジョー・ファンズワース(ds)
エリック・アレキサンダー(ts) except(5)
ハロルド・メイバーン(p) except(9)
ナット・リーブス(b) except(9)
1. リリカル・コールマン(Harold Mabern)
2. スーパー・プライム・タイム(Joe Farnsworth)
3. イン・ア・センチメンタル・ムード(Duke Ellington)
4. トリッピン(Joe Farnsworth)
5. 星に願いを(Leigh Harline)
6. マイ・ファニー・ヴァレンタイン(Richard Rodgers)
7. この素晴らしき世界(George Douglas、George David Weiss)
8. ディー・エム・シー(Joe Farnsworth)
9. スピリット・オブ・ジャパン(Joe Farnsworth)
プロデューサー:伊藤八十八
エンジニア:鈴木良博
録音:2011年9月21日
スタジオ: 東京 ソニー・ミュージック・スタジオ
さる4月24日、「丸の内Cotton Club」でエリック・アレキサンダー&ジョー・ファンズワース・カルテットを聴いた。本作『スーパー・プライム・タイム』の発売記念ツアーの初日である。ライヴとあって一曲がおよそ15分程度、テナー~ピアノ〜ベース〜ドラムと順次ソロをつないでゆくというラフな演奏で、ライヴならではのリラックスしたメイン・ストリーム・ジャズが楽しめた。
『スーパー・プライム・タイム』(VRCL-18852)はスタジオ録音であるが、5分から9分と程よい長さに凝縮しおよそ1時間の中に9曲が緩急をつけてうまく構成されていてライヴの雰囲気を上質の音で楽しめるように演出されている。たとえば一曲目のメイバーンのオリジナルではピアノ~ドラム~テナー~ドラムと云う順でドラムとの激しいかけ合いが繰り返されジャズの醍醐味を演出する。2曲目ではうって変わってブーガルー調の軽快な演奏に切り替わる。そして三曲目にスロー・テンポでエリントン・ナンバーを入れ、四曲目には一転アップ・テンポ、テナーとドラムとのバースの応酬でスリリングな場面を展開する。こうした選曲や曲の並べ方にミュージシャンと制作者の意図が浮かび上がる。一見ラフなようでいて聴きやすいように十分ペースが練られている、正にプロの技である。
ジョー・ファンズワース(ds)は着実なリズム・キーパーとしてレコーディングには引っ張りだこの状態でエリック・アレキサンダーをはじめ、デイヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、グラント・スチュワート(ts)、スティーヴ・デイヴィス(tb)等のアルバムに加わっている。とりわけクリス・クロスでは一時期ハウス・ドラマーのように多くのアルバムに名を連ねている。そういう点ではプレステイジに於けるアート・テイラー(ds)のような存在といえる。本作でもドラム・リーダー作にありがちな長いドラム・ソロはとらず堅実なリズム・サポートに徹し、ここぞというところでエリックやメイバーンとのフォー・バースでリーダーとしての存在感をアピールしている。
エリック・アレキサンダー(ts)も 『ジェントル・バラッズ』シリーズ(Venus)などで日本では大変な人気者であるが、いつもながらの豪放なトーン全開でエリック・ファンの期待に応えている。
ハロルド・メイバーン(p)も軽快なタッチで、あの「動くウエス」、英国BBCのTV番組「JAZZ 625」で初めて見たウエス・モンゴメリー(g)4の映像でのピアノ・シーンを想いださせてくれる好演である。(5)<星に願いを>はエリックが抜けてピアノ・トリオが楽しめる。
またエンディングの(9)<スピリット・オブ・ジャパン>はファンズワースとエリックのデュオで、東日本大震災の復興の願いを込めての演奏という。テナーとドラムのデュオといえばコルトレーンとラシッド・アリの『Interstellar Space』(impulse!) を思いおこすが、ファンズワースとエリックのデュオも中々の聴きごたえである。
本作『Super Prime Time』(VRCL-18852)はエイティ・エイツ・レーベルとしてはジョー・ファンズワース(ds)のプライム・タイムとしての第2作目にあたるが、ジョー・ファンズワースとエリック・アレキサンダーはクリス・クロスやヴィーナスの時代もふくめて10数年もの間ずっとコンビを組んで来ているわけで、音の背景にこのカルテットの永い歴史が見えてくる。
エリック・アレキサンダー&ジョー・ファンズワース・カルテットは4月24日の丸の内コットンクラブを皮切りに5月7日まで「スーパー・プライム・タイム・ツアー」を行い、このゴールデン・ウイークに多くのジャズ・ファンを楽しませることになっている (2012年5月 望月由美)
追悼特集
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#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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