# 918(アーカイヴ篇)
『MIZUHO & タイガー大越/Dear DUKE』
text by 望月由美
House Of Jazz HOJ120401 2,800円 |
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MIZUHO (vo)
Tiger Okoshi (tp/flgh)
Reo Genovese (piano/koto)
Randy Runyon (g)
Justin Purtill (b)
James Williams (ds)
1. It don't mean a thing
2. Prelude to a kiss
3. In a sentimental mood
4. Caravan
5. Take the A train~don't get around much anymore
6. Mood Indigo
7. Satin doll
8. In a mellow tone
9. A Flat Minor
Arranged & produced by Tiger Okoshi
Recorded at PBS Westwood, MA, May 24~27, 2011
羽毛のような浮遊感の中からプロデューサーの狙いが浮かび上がる
世の中に数多あるエリントン・ソングブックのなかでも極めつけはエラ・フィッツジェラルドの『Ella at Duke’s Place』(verve)であろう。なにしろエラが本物のデューク・エリントンの指揮する本物のエリントン楽団をバックにエリントン〜ストレイホーン・ナンバーを唄っているのだからその存在感たるや絶対である。日本の女性ヴォーカリストも多くの方がエリントン・ナンバーに挑戦している。そのなかでも強く記憶に残っているのが、さがゆきの『Day Dream sings Duke Ellington』(ARUMA-0401)と清水秀子の『Essential Ellington+Hideko Shimizu、SONGS』(CARCO-0011)である。どちらの作品もエリントン=ストレイホーンをうやまい、トリビュートしながら自分の音楽を表現しようとしている。
本作『Dear DUKE』はこういったこれまでのエリントン・ソングブックの流れとはいささか趣を異としている。MIZUHOのヴォーカルにタイガー大越(tp,flh)のワン・ホーン+リズムという編成。小編成ながら多重録音によって音を重ね合わせ、さらに豊潤なリヴァーブ処理などのサウンド・エフェクトを施して明るく賑やかなポップ・サウンドに仕立て上げられている。エリントンに慣れ親しんでいるリスナーにとってはエリントン・ナンバー集とすぐ気がつくがそうでない人にはポップな現代曲に聴こえるかもしれない。この羽毛のような浮遊感の中からプロデューサー、タイガー大越の狙いが浮かび上がる。
本作がMIZUHO(vo)の第4作目となる。MIZUHOは札幌の音楽教室の出身で、バークリー音楽大学のセミナーにも参加していてバークリーで教鞭をとるタイガー大越とはこれまでにも何作か共作を発表している。多重録音によりバック・コーラスまでを一人でこなし、スキャットを交えるなど器用な芸達者ぶりを聴かせている。タイガー大越(tp,flh)も、本誌JazzTokyoの稲岡さんがプロデュースした『Plays Standardsタイガー大越meets菊地武夫』(GENEON、2008)ではエモーショナルなトランペット・プレイヤーとしての一面をのぞかせていたが、本作『Dear DUKE』ではクールで軽やかなプレイを聴かせている。タイガー大越のオーヴァー・ダブを有効に活用した手際のよいアレンジが軽妙でMIZUHOとの呼吸も合っていて文句なく楽しい。二人とも器用なタレントの持ち主である。
あまりにも偉大であり、またあまりにも多くの名曲を残したデューク・エリントンなだけに非常に難しいエリントン・カバー集をいとも易々とコミカルに現代曲風にアレンジしたタイガー大越とそれをリラックスした語り口でこなしたMIZUHO、ふたりの創り上げた世界は数あるエリントン集のなかでも異色である。(2012年5月 望月由美/本誌コントリビュータ)
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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