# 928
『NO NUKES JAZZ ORCHESTRA (ノー・ニュークス・ジャズ・オーケストラ)』
text by 稲岡邦弥
SONG X 009 2,100円(税込) | ![]() |
<グレーゾーン>
沢田 穣治(b)
芳垣 安洋(ds)
岡部 洋一(perc)
馬場孝喜(g)
<サキソフォビア>
井上 "JUJU" 博之(bs,fl)
岡 淳(ts,fl)
緑川 英徳(as)
竹内 直(ts)
<ショーロクラブ>
秋岡 欧(bandolin)
笹子 重治(g)
沢田 穣治(b)
越川歩ストリングス・クアルテット
アン・サリー(vo)
おおたか 静流(vo)
ヘナート・モタ(vo & g)
パトリシア・ロバート(vo & tabla)
ノエル・アクショテ(g)
東野珠実(笙)
エリック・レニーニ(el-p)
南 博(p)
サイモン・フィッシャー・ターナー(soundscape)
渡辺 亮(perc)
1. Azzurro-prologue
2. Theme of N>N>J>O
3. Changeable Weather
4. StrangeToy(奇妙なおもちゃ)
5. IntheMonthofMarch(三月のうた)
6. New Song Of March(突然のメッセージ)
7. Azzurro-re-birth ( 命の源泉)
8. Night Rush Hour(夜のラッシュ・アワー)
9. 満月の夕 (Vo.アン・サリー)
10. Gray-zone(妄想と現実の狭間)
11. Circle Line
12. BlueMarch(宛名のない未来への手紙)
13. Smile
14. promise
15. Azzurro - epilogue
プロデューサー/アレンジジャー/コンダクター:沢田 穣治
録音 : 2012 年 1 月 5 日~9 日 サウンド・シティ
録音 & ミックス・エンジニア : 鎌田 岳彦 (fozxyroom)
マスタリング : オノ・セイゲン (サイデラ・マスタリング)
僕らの年代で「No Nukes」というと今から33年前にスリーマイルス島での原発事故(1979.3.29)に対してメッセージを発したアメリカのポップス系のミュージシャンによるアルバムを思い出す。もう1作、ジャズ系のミュージシャンを中心として制作されたアルバム「No Nukes」があり、僕もLPで所有しているはずなのだが、自宅では捜索不可、ネットでも検索不可、あるいは幻想なのだろうか(読者に情報をお持ちの方はご教示願いたい)。
多くのバンドが出演した3日間のライヴ・コンサートを収録したアメリカ版に対し、この日本版「No Nukes」は、沢田穣治というひとりのアーティストが全編を作編曲(武満徹の<三月のうた>など一部を除く)した「No Nukes Jazz Orchestra」という作品である。「Jazz Orchestra」というのは象徴的な意味で使われており、全編がいわゆる“ジャズ・オーケストラ”で演奏されたものではない。たとえば、プロローグとエピローグはピアノの連弾だし、沢田も長く在籍する「ショーロクラブ」の演奏もあれば、「グレイ・ゾーン」と「サキソフォビア」と「ストリング・カルテット」に南博p、エレック・レニーニel-p、ノエル・アクショテgが加わった大編成グループもある。リスナーとしては各曲ごとの演奏者が気になるところだろうが、まずジャケットは傍らに置いて虚心坦懐に音楽に耳を傾けることをお薦めする。僕らが体験した福島原発事故とその後の混乱、取り戻したい日常が音楽というメディアを通して語られる。おおたか静流(しずる)が歌う5.武満徹の<三月のうた>から沢田穣治の描く6.<New Song of March(突然のメッセージ)>に続くシークエンスは、かつて存在した“日常”と“日常”を奪った福島原発事故に対する怒り、戸惑い、哀惜と愛惜、“失われた日常”への希求などないまぜになった心情が吐露され、胸が熱くなる。このアルバムを象徴するパートに違いない。
僕がミラノでのジャズ・エイドを準備していた1月、旧知の宮野川に協力を依頼すると、「ノー・ニュークス・ジャズ・オーケストラ」(NNJO)のライヴがあるので、と返事が返って来た。事故の1周年に彼らは新宿のピットインに参集し、初めて公開の場で作品を世に問うた。ジャズ・エイドが5月に延期になると、宮野川はNNJOの制作途中でありながらもミラノに駆け付けてくれた。完成品を届けてくれたのは帰国後まもなく。宮野川とはこのコンセプト・アルバムの企画者であり制作を担当したソングエクス・ジャズの宮野川 真である。
アルバム制作に中心的役割を果たした宮野川真、沢田穣治を始め多くのミュージシャン、マスタリングを担当したオノ セイゲンや制作スタッフに心から感謝の意を表し、このアルバムを生み出した日本の音楽界を誇りに思う。ひとりでも多くの音楽ファンの耳に届くことを念じて止まない。(稲岡邦弥)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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