オレゴンの２年ぶりの作品『Family Tree』（通算２９作目）が、ローマを拠点とするレーベル＝CAM JAZZより発売された。彼等を形容すれば「言葉本来の意味において真の“フュージョン”を演奏するバンド」と言うことになると思う。彼等の優れた音楽が、一般に浸透していないことを、残念に感じている。“インターネット百科事典”Wikipediaの英語版は、彼等の音楽ジャンルを「チェンバー・ジャズ／エスノ・ジャズ／フォーク・ジャズ／ワールド・フュージョン／ニューエイジ／サード・ストリーム」と併記している。彼等のアマルガム状態の音楽を表現するには、まあ妥当なジャンル区分かもしれないが、ひとつのジャンルに特定できない音楽性がネックになっているのだろうか？ジャズの即興性を核心に置きつつ、クラッシック、世界各地の民族音楽、ロックからアヴァンギャルドまでを独自の方法論で斬新に融合しながら、良い意味でのポップさ／大衆性を忘れない音楽性は、もっと一般的な評価（人気）を享受して欲しいと思う。

グチはさて置いて、２０１０年に発売された前作『In Stride』は、グループ結成４０周年記念盤（？）に相応しく、彼等の多彩な音楽性をうまく集約した好作だった。その好調さ／充実度は、本作品にも引き継がれている。彼等のどの作品にも当てはまることだが、ラルフ・タウナーの作曲能力が光っている。今回は『In Stride』に収録されていた〈Summer’s End〉の様に、一聴して印象に残るメロディーさえ無いものの、どの曲も高水準だ。少しカリビアンな〈Carnival Express〉は、新境地と言えるだろう。オレゴン加入以前に、シカゴのラテン系グループで鍛錬を重ねたマーク・ウォーカーが、タイトなドラムソロを聴かせてくれる。少し“惚けた”調子のベース奏者＝グレン・ムーア作曲に〈Moot〉も良い。いつも通り今回の作品にも、フリーな集団即興演奏が（３曲）収録されている。各曲とも響きに合ったタイトルが付けられているが、〈Stritch〉は盲目のマルチリード奏者＝ローランド・カークが有名にした、ストレート・アルトサックス（管が曲がっていない）の事か？同じく優れたマルチ・リード奏者＝ポール・マッキャンドレスの担当楽器には、リストされていないし、聴いた感じだけでは、判断付きかねるが．．．。

ライブ会場でぜひ再会したい彼等であるが、（２０１２年）９月４−８日にバードランド（ニューヨーク）以降の日程が未定。筆者が住むサンディエゴ（南カリフォルニア）には来てくれるのだろうか？日本での最後の公演はもう何年前のことだったのであろうか？（Nobu Stowe ／須藤伸義）


*『Family Tree』及び『In Stride』は、アマゾン／ディスク・ユニオン等で購入可能。

*詳細は、以下のホームページで：

CAM JAZZ Records (www.camjazz.com)
OREGON (www.oregonband.com)
Ralph Towner (www.ralphtowner.com)
Paul McCandless (www.paulmaccandless.com)
Mark Walker (www.wiggage.com/markwalker.html)