# 957
『是安則克/ラッシュ・ライフ』
text by 稲岡邦弥
What’s New WNCJ-2237 \ 2,500(税込) |
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1. Story of Life(作曲:加藤崇之)
2. Lush Life(Billy Strayhorn)
3. ぼくの禅(加藤崇之)
4. To the Skies(藤井郷子)
5. First Song(Charlie Haden)
6. Circle(林 栄一)
7. You are My Everything(Harry Warren)
8. The End(小太刀のばら)
9. 回想(惜別の送り/林栄一)
1. 加藤崇之Trio (加藤崇之g/是安則克b/藤井信雄ds)
2. 清水くるみTRIO(清水くるみp/是安則克ds/藤井信雄ds)
3. 幽玄(宅朱実vo,p/加藤崇之g/是安則克b/松風鉱一fl/古澤良次郎ds)
4. Satoko Fujii ma-do(藤井郷子p/是安則克p/堀越彰ds/田村夏樹tp)
5. Be-Spell(鈴木典子vo/津村和彦g/是安則克b/岡部洋一perc)
6. 林栄一&マズル(林栄一as/是安則克b/楠本卓司ds)
7. 小山彰太「一期一会Trio」(小山彰太ds/是安則克b/竹内直fl)
8. 小太刀のばらTrio(小太刀のばらp/是安則克b/野崎正紀ds)
9. 林栄一ソロ(林栄一as)
録音:1990.10〜2011.9
ベーシストの是安則克(1954.12.6~2011.9.23)が急逝してから早や1年有余が過ぎた。その間、彼の演奏を収録したアルバムが次々にリリースされた。急逝は、レギュラー・メンバーだった藤井郷子p「mado」の渡欧直前のことでもあり、呆然自失していた藤井の姿が昨日のことのように思い出される。伴侶の田村夏樹tpと藤井は是安を含むレギュラー・バンド「ガトー・リブレ」最後のアルバムを『フォーエバー』(LIBRA)と名付けてリリースした。“是安さんはこんなにやさしい人がいるのか、というほどやさしい人でした。私はしょっちゅう言いたいこと言いまくって、「サトコのあとにはぺんぺん草もはえない」と言われてました。やさしいだけでなく、貫き通すという意味での意志の強さ、じっくりと考えて取り組むという真摯さを合わせ持っていました。また、びっくりするほど几帳面でした。空港で預けた荷物の半券の番号を確認するまで取り上げなかったり、着替えた服をいちいちきれいに畳んだり。何よりも驚くところは、彼の音楽には彼の人間同様、なにひとつ嘘がなかった事です”。
今年に入ってリリースされた加藤崇之gトリオのアルバム『TRIO1997』(地底レコード)も素晴らしく、本誌で紹介させていただいた(http://www.jazztokyo.com/five/five940.html)。加藤のギターが好きな本誌・悠主幹も相前後して同じアルバムを取り上げた(http://www.jazztokyo.com/five/five947.html)。
その後にリリースされたのが、是安とは早稲田の学生時代からの付き合いのミキサー佐藤弘が是安の甥と制作した本アルバムである。佐藤によれば、そろそろ是安のアルバムを作ろうと甥と語り合っていた矢先の急逝だったようだ。ふたりの呼びかけに応じたかつての共演者が1曲ずつ提供、さまざまなシチュエーションにおける是安のヴァーサタイルな音楽性を知ることができる格好のアルバムとなった。清水くるみトリオによる<ラッシュ・ライフ>」(酔いどれ人生)も是安の一時期を表しているが、奥さんによると是安はいわゆる「依存症」で、アルコールを断った後もコーラやトウモロコシに依存していたとのことである(ライナーノート)。このアルバムで是安は、よく歌い(#1)、弾(はじ)き(#2)、呻(うめ)き(#3,4)、沈潜し(#5)、走り(#6)、スイングし(#7)、擦(こす)る(#8)、などベーシストとしてあらゆる側面を見せている。各シチュエーションにおいて求められることに対し最大限誠意をもって応えている。共演者から寄せられたコメントがそのことを良く表している。
続いてリリースされたのは小太刀のばらpとのデュオ『是安則克メモリアル/是安則克 ウィズ 小太刀のばら』(Aketa’s Disk)で、2009年3月、アケタの店でのライヴ録音。冒頭<ジ・エンド>が現れ驚くが、これは、上記『ラッシュ/ライフ』にも収録されているように小太刀のオリジナルで、是安とのセッションではオープニングに演奏していたとのこと。残りの曲はすべて良く知られたスタンダードやジャズ曲で、オーネットの<ピース><ロンリー・ウーマン>、ミンガスの<ソー・ロング・エリック>からメセニーの<オールウエィズ・アンド・フォーエヴァー>など今となっては是安の人生を象徴するようなタイトルの曲が演奏されている。ピアノとのデュオなので、表になったり裏に廻ったり、是安のベースをたっぷり堪能することができる。
是安の死後リリースされたアルバムを一通り聴いてくると、NYのダウンタウン・シーンのコア的存在にウィリアム・パーカーbがいるが、是安はパーカーのようにオーガナイザーではないものの、新宿ピットインから西荻窪アケタの店に連なるいわば東京のダウンタウン・シーンのコア的存在のひとりではなかったのかという気がしてくる。共演者は皆ダウンタウン・シーンを支えるミュージシャンたちなのだ。それだけに、彼らの間に大きな喪失感が漂っているという事情もよく理解できるのだ。
12月には、死の3ヶ月前にNYで録音されたという藤井郷子madoの3作目にして最後となるアルバム『Time Stands Still』(not two)がリリースされる予定という。(稲岡邦弥)
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追悼特集
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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#10 Contents
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シスコ・ブラッドリー
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「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
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