#  958

『イェーナインリン&高橋ゆり/ピョンチョウに捧ぐ』
text by 高橋ゆり


DVD(非売品)ミャンマー

Tribute to Maestro Pyone Cho
--- A collection of songs dedicated to the ‘Maha Gita’ (Burmese classical music) maestro

Ye Naing Linn & The Mingalar Hsaing Waing Ensemble
Yuri Takahashi

1. Introduction  *instrumental music
2. World Meltdown
3. The Three Worlds
4. Memories of Mr. Pyone Cho
5. Truly Victorious, Everything is Auspicious
6. Getting Tired of the Life
7. We Shouldn’t Be Away from ‘Maha Gita’ (Burmese classical music)
8. Biography of Maestro Pyone Cho  * instrumental music

本年、縁あってミャンマーで私の20年来の音楽の先生であり、友人でもあるイェーナインリンといっしょに伝統音楽のDVDを共同制作しました。

イェーナインリンと自分たちが本当に演奏したい曲を演奏したいねと話しているうちに、それなら文学者・音楽家ピョンチョウ (1878-1928) を顕彰するための作品集を作ろうということになり、完成したのがこの作品です。ピョンチョウはマハーギータ別名タチンジー、ミャンマーの古典音楽を愛するものには忘れることのできない人物、古典歌曲の数々が現在にまで伝えられているのも、文学者でもあった彼が古文書を調査して一冊の本にまとめたことが多いに関係しています。編集の際、彼は自作の曲も本に含め、それらも現在、古典歌曲として覚えられるようになりました。

ピョンチョウはエーヤーワディ管区チャイラッの人で、イェーナインリンも自分の生まれ育ったこの地をベースに自己のサインワイン楽団(ミャンマー伝統楽器サインワインを中心にしたアンサンブル)を率いて音楽活動を展開しています。そしてイェーナインリンと私にとっては忘れられない共通の音楽の師、セインボウティン(1938 - 1994) もチャイラッ出身。というわけで撮影はすべてチャイラッを訪問して行われました。ピョンチョウ作の豊穣な表現で善行の実践を勧める仏教歌を中心に、イェーナインリンのオリジナル曲も収録してあります。

このDVDはミャンマー国内を対象としており、ここ数十年のポップスの大人気はそれはそれでかまわないが、古典音楽にももっと気軽に親しんでほしいという願いをこめてあります。そして文学と音楽のコンビネーションであるピョンチョウの世界をこのDVDを通じてもっと知ってもらえたらと希望しています。

本DVDは市販はしていませんが、イェーナインリン・サインワイン楽団の演奏会場(パゴダ祭りなど)で希望者がいれば実費で頒布しています。おかげさまで去る2月末のリリース以来、2ヶ月で600枚放出という好評を頂き、ミャンマー・トップクラスの古典歌曲歌手マーマーエイ女史、イーイータン女史からも賞賛の言葉を頂きました。さらにシドニーを始め、ニュージーランド、日本、イギリス、シンガポール、アメリカなどのミャンマー人社会でも少しずつ本DVDのことが知られつつあります。

下記のサイトで本DVDの一部がご覧になれます。スクロールダウンすると黒いスクリーンが現れますので、 'play' アイコンをクリックしてお楽しみ下さい。
http://www.new-sky.info/YuRiTakahashi/YuriTakahashi_htm.html

適宜編集を加え、将来的にインターナショナル・バージョンをリリースすることも考えています。
ご意見いただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。

追)DVDに収録されている演奏でイェーナインリンが主に演奏している楽器、サインワインは、インド起源ですがもはやミャンマーにしか存在しない楽器です。ミャンマーの伝統楽器アンサンブルの要で、環状にセットした21のそれぞれ粘土で調音した太鼓でメロディーを弾き、打楽器としても活躍します。
この楽器を弾きこなせる者がバンド・リーダーとなり、バンド・リーダーは他の楽器もこなすマルチ・プレイヤーです。また、ミャンマーの古典音楽は伝統的に楽譜はなく、歌詞が古来より保存されており、いわば歌曲の体系とも言えるので、バンド内における歌手の役割は重要です。
(高橋ゆり:ミャンマー文化研究者/ミャンマー伝統音楽歌手)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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