# 962
『アドリアン・ユストゥス/パガニーニ カプリス全24曲ライブCD&DVD』
text by 丘山万里子
本誌コラムでもご紹介したアカデミア・ユリコ・クロヌマ(http://www.jazztokyo.com/column/editrial02/v55_index.html)で学んだメキシコのヴァイオリニスト A.ユストゥスのライブCD&DVD。パガニーニの24曲のカプリス全曲演奏である。アッカルドやパールマンなど、いわゆるパガニーニ弾きと称される人々にも全曲演奏盤はあるが、それらはみなスタジオやホール録音で、ライブではない。今回のディスク&DVDは、その意味で画期的であり、またユストゥスが全曲を独自の視点で並べている点でも、類のないアルバムとなっている。
超絶技巧がふんだんにちりばめられた難曲のオンパレードだが、そんなことなど知らぬげに全編にしなやかな抒情とパッションがあふれる。いわゆる超高速早弾きで唖然、とか、跳躍音程をこともなげに往来して呆然とか、そのヴィルティオジティで聴衆を圧倒し力でねじふせる演奏ではない。どんなパッセージにも豊かな歌心があふれ、弾き飛ばされることがない。ていねいで自然な音楽作りだ。トレモロの波に飾られた第6番のしっとりした情感、第8番の優しい重音での語りかけ、第9番の甘やかなメロディの美しさ、第13番「悪魔の微笑」も悪魔というより天使の羽がかすかに震えるような趣き。などなど、さまざまな曲趣が--アルペジオやスケールでの駆け上り、駈け下る高速パッセージの淀みなさ、よく響くピチカートやフラジョレット等--収まるべき位置を得て万華鏡のように展開される。締めくくりの第24番は細部のニュアンスを大切にしつつ、持てる技巧を全開に。アンコールの最後はユストゥス編曲によるメキシコ民族舞曲集で、思い切り良くはじけ飛ぶ音の愉悦に、客席からも手拍子が湧く。曲ごとに入る拍手がいささか煩わしいが、DVDにはそれぞれの曲についてのユストゥスの説明も入っており、なるほどこういう進行だったのか、と納得。その運指や弓使いもアップでうかがえ興味深い。(丘山万里子)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.