#  981

『Atzko Kohashi meets Sebastiiaan Kapstein/dualtone』
text by 稲岡邦弥


Toniq Records TR00112013  

Atzko Kohashi(p)
Sebastiaan Kaptein(ds)

1.Blue in Green
2.Falling Grace
3.Icebreaker No.1
4.But Beautiful
5.I Remember April
6.Icebreaker No.2
7.Very Early
8.How Deep is the Ocean
9.My Old Flame
10.Pittoresk
11.Two by Two
12.A Nightingale Sang in Berkekey Square

Recorded on April 2, 2012 at Studio Eleven, Hilversum, Netherlands
Recorded, mixed a& mastered by Frans de Rond
Original recording format:96kHz/23bit
*One-to-One mastering

本誌Jazz Tokyoのふたりのゲスト・コントリビュータから新録が届いた。小橋敦子と須藤伸義。ふたりともピアニストで、海外を拠点に活躍しているという点(小橋はアムステルダム、須藤はサン・ディエゴ)や音楽の他に仕事を持っている点(小橋は翻訳家、須藤は大学の心理学研究所)では共通しているが、追求する方向性はまったく違う。小橋はメインストリームで、須藤はトータル・インプロヴィゼーション。

小橋は学生時代、慶応のビッグバンド、ライト・ミュージック・ソサエティのピアニストを務めており、その後、NYでスティーヴ・キューンにつくなど本格的な"ジャズ・ピアニスト"として磨きをかけたということだが、僕が初めて彼女のピアノに接したのは2009年の録音で、ベースの井上陽介とのデュオ『ターナラウンド-Tokyo Live-』(バウンディ)だった。Jazz Tokyoに寄せた僕の紹介文 を読み返してみると、彼らの演奏に酔わされたのか、いつになく気取った文章になっており気恥ずかしい。
じつはこの新作『dualtone』を月刊「JazzJapan」で紹介すべく、規定の250字にまとめて提出したところ、僕が見逃していたのだが、すでに先約があり却下されてしまった。そのボツになった短評は以下の通り;

ベースとのデュオに続く小橋敦子の新作はドラムとのデュオ。キャリアを偲ばせる洒脱な演奏は愛聴盤のラックに!

"アムステルダムに移住した小橋敦子から新作が届いた。前作の井上陽介(b)とのデュオ『ターナラウンド』(What's New)は愛聴盤の1枚だが、このセバスティアン・カプティーン(ds)とのデュオもそのまま愛聴盤のラックに収まった。ドラム(といってもブラシやシンバルを多用)とのデュオでより自由を獲得した小橋は、居並ぶ名曲を気の向くままにディグする。その洒脱なセンスは年を重ねてさらに磨きがかかった。オランダ生まれで沖縄に住むカプティーンのドラムのセンスも抜群。ふたりの道行きに嫉妬さえ覚えそう。"

ワインをたしなみながら、1日の疲れを癒し、ぜいたくなひとときを過ごすには最適な一枚。
野暮を承知で付け加えるなら、"One-to-One Mastering"とは、録音からマスタリングまでをひとりのエンジニアが受け持つこと。Frans de Rondは、「僕の使命は単なるサウンドを捉えることではなく、ミュージシャンがその場、その時に感じたことをまるごとリスナーに伝えること」と書き、そのためには、「ルディ・ヴァン・ゲルダーやロイ・デュナンがそうであったように、録音からマスタリングまでを現場を知る唯一のエンジニアに委ねるべき」、と主張している。
(稲岡邦弥)

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.