# 984
『ドヴォルザーク&ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲集/ユリア・フィッシャー』
text by 大木正純
ミュンヘン生まれの若手奏者、ユリア・フィッシャーが昨年9月にレコーディングしたニュー・ディスク。プロフェッショナルにはきわめて珍しいヴァイオリンとピアノの両刀遣いがよく話題になる人だが、今回は表芸(?)ヴァイオリンでの登場。彼女も早いもので今年の6月には三十路を迎える。これが20代最後のリリースということになるのかも知れない。
このディスクで私が最も心惹かれたのは、演奏全体にそこはかとなく漂う、一種の爽快感だ。腕の立つ新鋭がとかく目をつり上げてテクニックに走ったり、さもなければなぜか苦しみ悶えるような表情で ―― まるで演歌でも唸るかのように ―― ヴァイオリンと格闘したり、といった姿をしばしばみかける中で、フィッシャーの演奏にはいかにものびのびとした気持のゆとりがある。そう、音楽はなにも苦しむためにあるのではないのだから、できることならもっと心を解き放って、楽しんでしまう方が良いに決まっている。
フィッシャーが選んだ曲目はドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲とブルッフの同第1番。とりわけ前者は知名度の割には必ずしも演奏頻度の高い曲ではないだけに、優れた新盤の登場を歓迎したい。この協奏曲の至る所に顔を出すノスタルジックな楽想の数々を、フィッシャーはあるときは朗々と、またあるときはしみじみとしたタッチで、表情豊かに奏でてゆく。ドヴォルザークならではの魅力に溢れた、チャーミングな30分間だ。一方のブルッフでは、曲に盛られた濃厚なロマンティシズムがさっそうと歌い上げられ、これまた印象は爽やかこの上ない。手兵チューリヒ・トーンハレ管弦楽団を指揮するデイヴィット・ジンマンのサポートが、ツボをぴたりと押さえて見事。(大木正純)
追悼特集
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
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