# 995
『Ben Wendel & Dan Tepfer/Small constructions』
text by 伏谷佳代
Sunnyside SSC4013 |
Ben Wendel(ベン・ウェンデル;sax, Basoon, Melodica, Piano((*track 12)))
Dan Tepfer(ダン・テプファー;Piano, Fender Rhodes, alto sax((*track12)))
1.Still Play
2.Pannonica
3.Jean and Renata
4.Line Up
5.Line
6.Nines
7.Gratitude
8.Ask Me Now
9.Rygabag
10.Darn That Dream
11.Variation 1 in D minor
12.Oblique Strategy
録音:2011年10月7日〜10日@ヤマハ・アーティスト・サーヴィス N.Y.
エンジニア:Dan Tepfer
ミキシング&マスタリング:Nate Wood(ネイト・ウッド)
プロデューサー:Dan Tepfer & Ben Wendel
スモール・コンストラクションズ-----ちいさな構築。タイトルどおり、NYの気鋭ふたりによるシンプルかつ濃縮された密度のデュオ。小ぶりの作品12ピース。自作曲のあいだにモンクやトリスターノなどのスタンダードも挟みこまれる。タイトルがこうだとミニマリスティックで硬質な造形をついつい連想してしまうが、ソリッドさで勝負している感は、すくなくとも表向きは感じられない。緻密ではあるがもっと気の置けない、たとえていうならば羽ペンが躍るような、ふわりとした自在さが全編を貫く。泉のように湧き出るアイディアとインスピレーション、それらが交感しあう瞬間の実況中継。アコースティックのソフトさを最大限に活かす反面、ダブを思わせるメカニックな交錯が片面で巧みに仕掛けられる。そのメカニックもあくまで手工業的な職人芸、バスーンとメロディカが小粋だ。どの曲も肌になじみやすいメロディと練られた音色のうつくしさが際立つが(テプファーの鍵盤を押すアクションが手に取るようにつたわる)、筆者がもっとも気に入ったのが、4.〜6.Line up〜Line〜Ninesのシークエンス。曲名のどこか語呂遊びのような口すべりの良さ同様、小口ながら饒舌でキレのある楽器使いで聴き手を楽しませてくれる。多彩にとびだす音色の煌(きら)めきは、さながら宝石箱をひっくり返したような稚気にあふれる。ダン・テプファーといえば、先に発表された大作『ゴルトベルク変奏曲』のイメージがつよいが(もちろん今回収録されているヘンデルの変奏曲でもその名残は健在)、彼のソフト面や創作背景の一端が垣間見える1枚。音楽をすることの幸福に満ちている。余談だが、ジャケット写真はダンのNYのアパートメントであるという(*文中敬称略。Kayo Fushiya)。
【関連レヴュー】
http://www.jazztokyo.com/five/five906.html
http://www.jazztokyo.com/five/five873.html
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