# 018
JAZZ CD.NO 4th set
jazz from Norway 2010
text by Kenny INAOKA
ノルウェーのジャズ・シーンの「今」を伝える3枚組CDセット。ノルウェー外務省
のサポート(通常、経済的援助を意味する)を得て、ノルウェー・ジャズ・フォーラ
ムが制作した非売品である。ノルウェー・ジャズ・フォーラムとは、ノルウェーでジャ
ズに携わるミュージシャン、フェスティバル、クラブのための組織で、ノルウェーと
海外のジャズに関する情報を収集、発信することを目的としている。このCDセットは
第4集だが、すでに、2002年に第1集が、2005年に第2集が、2008年に第3集がそれ
ぞれ制作されている。日本では、ノルウェー王国大使館広報部を通じて関係プレスに
配布された。
一般に、ノルウェーのジャズを知る手掛かりとしてもっとも手近な方法は、ECM、
ルーネ・グラモフォン、ジャズランドからリリースされているCDを聴くことだろう。
しかし、このCD3枚セットに収録されているこれら3レーベルの音源は10曲を数え
るのみである。全43曲中の10曲。ミュージシャンでいえば、ヴィダール・ヨハン
セン、アリルド・アンデルセン、トリグヴェ・サイム+フローデ・ハルトゥリ、ブッ
ゲ・ヴェッセルトフト、オーラ・クヴェルンベルク、モッテン・クヴェニル、スザン
ナ&ザ・マジカル・オーケストラ、ハーコン・コルンスタッド、ジゼル・エンドレッ
セン、スティアン・ヴェスターフス。[CD01]の1曲目は大ベテラン、カーリン・クロ
グだが、彼女の歌う<セニョール・ブルース>はMeantime Recordsの音源だし、ECM
のアルバムで良く知られるアルヴェ・ヘンリクセンの<フィヨルデン>は、NORCDの
原盤である。つまり日本でよく知られている上記3レーベル以外からピックアップさ
れている残りの30数曲は相当マニアックなノルウェー・ジャズ・ファンでもない限
りあまり余り耳にする機会のないミュージシャンということになる。ECMの熱心なファ
ンはジャズからトラッド、フォーク、コンテンポラリーまで、よくぞ掘り出してきた
ものだと感心しながらプロデューサー、マンフレート・アイヒャーのノルウェー・ミ
ュージックに対する惚れ込みようと執念に驚いているのだ。しかし、このCDセットを
聴くと、それでもなお日本に紹介されている優れたミュージシャンはまだ限られた一
部に過ぎないということを認識せざるを得ないのだ。もちろん、ECMを通じて日本に
紹介された初代のヤン・ガルバレクやテリエ・リプダル、ヨン・クリステンセンなど
のベテランはこのセットには含まれていない。おそらく第1集から第3集の間で紹介
されているのだろう。そういうなかで、ノルウェーや北欧を中心にヨーロッパ諸国か
ら優れたグループを招聘、われわれに未知の音楽に触れる機会を提供し続ける大沢勝
夫氏(Office Ohsawa)の慧眼と努力に感謝しひとこと触れておきたいと思う。
ノルウェーの総人口は450万人。東京都の世帯数とほぼ同じといわれている。決
して大きくはないノルウェーからこれだけ多くの優れたジャズ・ミュージシャンが世
界に向けて発信されている。ジャズ・ジャーナリストのスチュアート・ニコルソン
がCDに寄せたエッセイによれば、イギリスの有力紙「ガーディアン」はすでに2005
年12月に「今や、世界のジャズの中心地は、ニューオリンズでもなければシカゴでも
ニューヨークでもない、オスロである」と書いた、という。ノルウェーが雑食性のジャ
ズの未来を描ける理由のひとつとして、ニコルソンは、ジャズがノルウェーの母国語
ではなく犯すべからざる言葉でもない。ミュージシャンは、ジャズの伝統に捕らわれ
ることなく、クラシック、ポップ、フォーク、ロック、フリーからエレクトロニクス
まであらゆるジャンルの音楽要素を駆使してジャズの表現を豊かにすることに何らし
ばりを感じることがないことを指摘している。
イマジネーションにあふれたノルウェーのジャズが目一杯詰まったこのCDセットを
手にひるがえって日本のジャズの現状を顧みるとき、日本のジャズに関する情報を収
集、発信するこれといった組織のないことに気付く。それに対する公的支援も耳にし
たことはない。 “アメリカに次ぐジャズ大国日本”というキャッチフレーズは,ジャ
ズの生産国ではなく消費国を指標とした場合をいうに違いないと思わざるを得ないの
である。(稲岡邦弥)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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