#  028

CD『spaceone』(非売品)

text by 稲岡邦弥



1. Foamy cell 松本健一
SXQサックス・クインテット(松本健一/ss 立花秀輝/as 藤原大輔/ts 吉田隆一/bs 木村昌哉/ts,ss)
2. knock 航
航(p)
3. Ton To 田村夏樹
田村夏樹(tp)
4. Shot music
作曲:(1) 臼井康浩 (2) ケリー・チュルコ (3) 航 (4) シマジマサヒコ (5) 田中悠実子 (6) 田村夏樹 (7) 藤井郷子 (8) 松本健一
演奏:藤井郷子/p 田村夏樹/tp 臼井康浩/g 松本健一/sax 田中悠美子/三味線
航/p シマジマサヒコ/b井谷享司/perc
5. Wind Dance 藤井郷子
Satoko Fujii New Trio:藤井郷子/p トッド・ニコルソン/b 井谷享司/ds,perc
6. WAO 田村夏樹
KAZE:田村夏樹/tp クリスチャン・プリュヴ/tp 藤井郷子/p ピーター・オリンズ/ds
7. ペテン師 #18
航(p,vo)
8. hierophant 臼井康浩
臼井康浩(elg)

Produced by spaceone
Mastered by Usui Yasuhiro
Design by Shimaji Masahiro
Photos by Kitazato Yoshiyuki, Koh and Kawai Mai
This CD is dedicated to Kelly Churko in his memory.

2013年12月31日を以て足掛け4年の活動に終止符を打ったミュージシャンによる自主組織spaceoneが、その活動履歴、解散決定報告とともにCDを制作、手を貸した協力者とサポーターに配付したもの。
spaceone(スペースワン)は、藤井郷子、田村夏樹、松本健一、臼井康浩の4人が発起人となり、「ミュージシャンが、本当にやりたい音楽を自由に演奏できて、リスナーも共有できる場所」を求めて奔走してきた。いわば、ミュージシャンの自主管理、自主運営による、演奏の場であるとともに、リスナーと情報を共有できる交流の場でもあり、将来的にはミュージシャンの権利の管理や商品化など本部機能をも有する場の確保を目指していた。インディーズ系や自主レーベルを通じて音楽の制作と流通は自由に行えるインフラが整った現在(かつてレコード協会加盟各社以外はレコードのプレスを発注できない時代があった。既得権益の確保と著作権の管理を目的としていた)、ライヴ演奏についてもミュージシャンの自主運営下で継続的に行える場が確保できればそれは素晴らしいことに違いない。70年代にNYのダウンタウンを中心に盛んになったロフト・ジャズを担ったロフトの現代版、進化版といえば良いだろうか。NYには、演奏の自由度が高く、録音の機能を備えたミュージシャン寄りのクラブ「ニッティング・ファクトリー」(一時は設備を活用したライヴ中継、ライヴCDの制作、ツアー・ブッキングなどの活動も展開していた)や、サックス奏者/作曲家のジョン・ゾーンが主宰するスペース「ザ・ストーン」などがあるにはあるが、後者にはブッキングやレーベル運営に主宰者の意向が強く反映されている。ロフト・ジャズ時代にはジャズ好きのオーナーが格安の条件でスペースを提供したり、整備前のロフトを期限付きで貸し出すなどの例が多かった。MYのロフトの場合、スペースの広さ、天井の高さ、防音に影響するビルの構造など東京のそれとはまったく比較にならないほど好条件に恵まれている。東京では介護/福祉施設、保育所に必要な土地やスペースの確保さえ絶望的な現状である。spaceoneの場所を求めての活動は相当な困難を伴ったであろうことは想像に難くない。
そんな困難ななかでも彼らは既成のライヴハウスに協力者を求めて、演奏活動と広報活動を行ってきた。その成果をまとめたのがこのCDである。作品と演奏は、発起人の4人と活動の一翼を担ったピアノとヴォーカルの航が中心。詳細は上掲の通りだが、どの演奏も創意と創造性に富んだ内容である。田村夏樹のカルテットKAZEや藤井郷子のニュー・トリオのようにCDがリリースされていたりツアーが行われたものもあるが、4.Shot musicなどはまさに彼らがspaceoneの場を得て行いたい演奏の象徴と思える。8人の作曲家による15秒以内の音楽(=shot music)の演奏集である(入谷なってるハウスで公開リハーサル〜レコーディング)。
なお、このCDは、今年1月13日急逝したカナダ人ギタリスト、ケリー・チュルコに捧げられている。彼もまた立ち上げ時の発起人のひとりであったという。
SpaceoneのFacebookにはこの記念CD(非売品)のプレゼント告知が出ているので、入手して日本のカッティング・エッジなクリエイティヴ・ミュージックの一端に触れてみたらいかがだろう(但し、枚数に限りがあると思われるので入手できるかどうかは保証の限りではないが、トライしてみる価値は十二分にある)。(稲岡邦弥)

http://www.jazztokyo.com/column/spaceone/spaceone120226.html
* spaceoneのFacebookにこの記念CDのプレゼント告知が出ている;
https://www.facebook.com/spaceoneFanPage

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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