# 084
Mathias Eick trumpet|マティアス・アイク
トランペッター
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開演直前、屋台でコーヒーを求めるマティアスを見つけ声をかけた。「ECMのハイノからインタヴューをするように頼まれてるんだ。新録を済ませたそうだね。明日の予定は?」「朝8時半にホテルを出る」「えっ!」「事前に連絡してくれたら良かったのに」「NHKに申込んだけど、メールの返信がなかった」「何てこった」「今晩しかないね。演奏が終わってからどう?」「アーリルのバンド聴きたいんだ。最高だからね」「じゃあ、インターミションでやろう」「冷たいビール飲ませてね」「OK!」
演奏が終わったマティアスはサイン即売会へ。
「やっと解放されたね」「生ビール頼んで」「つまみは?」「そばかうどんがいい」
「そばもうどんもないね」「じゃあ、寿司か刺身」「甘エビと烏賊があるって」
「小皿でいいよ。あとでメンバーとディナーを囲むから」
♪ アイドルはC.ブラウンとC.ベイカー
稲岡邦弥 (JT):随分、日本通のようだけど、今回は3度目の来日でしょう?
マティアス・アイク (ME):いや、5度目だ。じつは、ガールフレンドとプライベートで1度来てる。ジェイコブ(註:ジェイコブ・ヤングg。日本ではヤコブ・ヤングと表記されている)と来た(註:2007年9月)あとにね。どうしても日本の素晴らしさを彼女に教えたくてね。箱根の温泉に泊まったんだけど最高だった。それから今年の7月には「ヤガ・ヤシスト(Jaga Jazzist:http://twitter.com/jagajazzist)でフジ・ロックに出てる。1万5千人の聴衆を前に演奏したんだ。9ピースの大きなバンドでね。僕はトランペットの他にベースとヴァイブも演奏した。
JT:それは知らなかった。
ME:だけど、今回は自分のバンドだからね。自分のバンドで日本に来るのはひとつの夢だったから。
JT:4日の朝のギグは大変だったんじゃないの(成田から代官山のクラブ「晴れたら空に豆まこう」に直行、午前11時からライヴがあった)。
ME:いや。飛行機の中でぐっすり寝たから。
JT:ツイン・ドラムでリズムはロックっぽかったり、ファンクっぽくなったりしたけど、トランペットは奇麗な音色で良く伸びてメロディが印象的だった。
ME:僕のアイドルはクリフォード・ブラウン(1930~1956)とチェット・ベイカー(1929~ 1988) だから。彼らの影響はあるかも知れない。
JT:ジャズ・トランペットのクラシックだね。マイルス(デイヴィス、1926~1991)は?
ME:この地球上に住むトランペッターでマイルスの影響を受けてない奴がいると思うかい?
JT:マイルスはどの時代?
ME:50年代と60年代だね。君は?
JT:僕はどちらかというとエレクトリック・マイルスだ。とくに好きなのは『アガルタ』と『パンゲア』(共に1975年録音)。
ME:知らないな。
JT:日本のコンサートのライヴ・レコーディングだ。
ME:聞いたことがない。
♪ パット・メセニーの手法を真似た。
JT:ところで、新作のことだけど。
ME:今日演奏したバンドで録音した。曲によって編成が変わるんだけど。来年2月に発売予定だ。
JT:ツイン・ドラムのバンドをECMが録音するのは珍しいね。
ME:ウフッ。
JT:レインボウ・スタジオで録音したの?マンフレート(アイヒャー。ECMのプロデューサー)のプロデュースで?
ME:いや。友達のスタジオで録音した。3ヵ所を使って。ブゲ(ヴェッセルトフト)のスタジオもね。費用は全部僕が払った。僕のセルフ・プロデュースでECMがミキシングをした。
JT:ずいぶん思い切ったね。
ME:一発で録れる音楽ではないので、じっくり時間をかけたかった。ECMの場合は2日だから。スタジオを使えるのは。最初のアルバム(『The Door』ECM2050/2007年)の録音の時は、マンフレートが急ピッチでOKを出していくんだ。あれよあれよという間に終わってしまった。
JT:新人の場合は仕方がないかも知れないね。
ME:新人だからこそ時間が欲しいんだ。パット(メセニー)に相談したら『ファースト・サークル』(ECM1278/1984年) の録音のやり方を教えてくれたんだ。彼も自分でリスクを負って思い通りのアルバムを作った。僕も同じ事をした。
♪ パットばかり聴いていた。
JT:ECMではどんなアルバムを聴いていたの?
ME:パットばかりだね。僕が生まれた頃はすでにECMが存在していたことになる(マティアスは、1979年生まれ)。
JT:ECM3世代目のトランペッターということになるのかな。ノルウェー人としては。
ME:そうだね。ニルス・ペター・モルヴェル(1960年生まれ)とアルヴェ・ヘンリクセン(1968年生まれ)が先にいた。
JT:しかし、ノルウェーというのは人口500万人足らずだよね。
ME:そうさ、東京の一部くらいしかない。
JT:その小さな国からどうしてこれほど優れたミュージシャンが次から次に出てくるんだろう。
ME:音楽はノルウェー人にとってとても大事な文化なんだ。どんな小さな町にも大なり小なり音楽フェスティバルがある。小さいときからフェスティバルを聴きにいったり、出演したりしている。
JT:ECMとのコンタクトは?
ME:ジェイコブ(ヤコブ)・ヤングgのバンドからニルス・ペターが抜けて、僕が後釜に入ったんだ。
JT:ヤングのアルバム『イヴニング・フォールズ』(ECM1876/2002年)でECMデビューを果たした。それから...。ちょっと待って。
ME:何だいそれは。
JT:ECMの完全カタログさ。日本で出版されたばかりだ。
ME:ちょっと見せてよ。うわー、すごいな。これ(ジェイコブ・ヤングの2作目『サイドウェイズ』ECM1997/2006年)と、それからこれにも参加している。これは、アルヴェ・ヘンリクセンのアルバムだ。
JT:これは君へのギフトだ。海外のミュージシャンでは初めてだよ。
ME:凄い。ありがとう!あとでゆっくり見せてもらうよ。
JT:マティアス、今、アーリルが演奏している曲、日本風だと思わないかい。
ME:中国風といった方がいいかな。いずれにしてもペンタトニックだ。ケニー、申し訳ないけどインタヴューはここまでだ。何か聞きたいことがあったらメールで質問してよ。じゃあ、アーリルのバンド聴きに行ってくるよ。
CD1:『マティアス・アイク/ザ・ドア』(ECM) |
CD2:『ヤコブ(ジェイコブ)・ヤング/イヴニング・フォールズ』(ECM) |
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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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