# 124
ジョナサン・カッツ
Jonathan Katz (pianist/composer/arranger/band-leader)
ニューヨーク州ロングアイランド出身。 |
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♪ 新作はNYTCの10年間の活動の結果、成長の証し
Jazz JT:まず、最新CDのタイトルを教えて下さい。
Jonathan Katz:『PRECIOUS - Live at the B-Flat』です。
JT:これはNYTC(ニューヨーク東京コネクション)の3作目のCDですね。先の2作は?
JK:デビュー・アルバムは『Live in Tokyo』 (2005) 、2作目は『New York & The Night & The Music』(2007)です。
JT:最新作の録音は?
JK:2012年の5月21日に、赤坂のB-Flat でライヴ・レコーディングしました。
JT:収録された曲の構成は?
JK:僕が3曲、デイヴ(ピエトロ)が2曲、大樹(安ヵ川)が1曲提供しました。それにカヴァーが<アルフィー><ニュー・シネマ・パラダイス〜愛のテーマ><サマータイム>の3曲です。
JT:アレンジの担当は?
JK:それぞれの曲の提供者自身です。カヴァーは、<アルフィー>と<サマータイム>は僕が、<愛のテーマ>はデイヴが編曲しました。
JT:楽曲は録音のための新曲ですか?
JK:<アルフィー>と<プレシャス>はそれまでにあまり演奏したことがなく、それ以外は何度か演奏した経験がありました。
JT:それぞれの曲について説明していただけますか?
JK:<アルフィー>は僕のアレンジで、12/8でアフロ・フィールとスイング・フィールで往き来しています。
<ニューガトリー・ソーツ>はミディアム・スロー・ブルース風で、12/8的なフィールです。“ニューガトリー(nugatory)”というのは“価値の無い”という意味です。
<レッツ・ディサイド>は、早いテンポのバッピッシュなスイングです。ツアーが終わってほっと一息ついた感じ、カタルシスを書いてみました。
<プレシャス>は生まれてくる娘のために僕が書きました。娘の写真をカヴァーに使っています。ストレートなワルツ(3/4) でクラシック調の曲です。
<タターター>はサンスクリット語で“あるがままであること”“現実の真性を理解すること”という意味ですが、日本語では通常“真如”(しんにょ)と訳されています。ワルツ(3/4) です。
<ニュー・シネマ・パラダイス〜愛のテーマ>は、デイヴのアレンジですが、インプロのベース・ソロのイントロで始まり、本編はボサ・ノヴァ、2種のキーで書かれています。
<サマータイム>は僕のアレンジで、早いテンポのスイングでピアノがメロディを取ります。
<ディープ・ヴァリー>は大樹(安ヵ川)のバラードですが、能を観た印象ということです。
<群馬ホーダウン>は、アップテンポのビバップです。狂騒の東京を離れて、群馬の山並みや川、温泉、自然に遊んだ思い出を書きました。ホーダウンというのは、ヒルビリーやカントリー・ミュージックでスクエア・ダンスを踊るアメリカの田舎のダンスパーティのことです。
JT:日本のオーディエンスをどう思いますか。
JK:熱心に耳を傾け、良く反応してくれるオーディエンスだと思います。
JT:オーディエンスの反応が演奏に反映されたり、オーディエンスにインスパイアされることがありますか。
JK:もちろんです。ジャズの場合は、オーディエンスの反応が演奏に強力に影響してきます。このCDの場合も客席から何度も声が出たり、大いにインスパイアされました。オーディエンスに活気がなかったり反応が鈍いと結果は違ってくるでしょう。幸い、録音の日は大いにインスパイアされました。
JT:結果には満足していますか?
JK:ミュージシャンとしていつも今よりさらに前進を心掛けていますが、この夜の演奏には満足していますよ。このCDは僕らのバンドの10年間の活動の成果を記録した成長の証しだと思っています。
♪ ツアーを通じて音楽的にも人間的にも成長する
JT:NYTCはどのようにして結成されたのですか。
JK:そもそもは、1982年のニュー・ハンプシャーのハイスクールのミュージック・キャンプで僕とデイヴが出会ったんだ。成長して、僕は日本へ、デイヴはNYへ移住した。デイヴが秋吉敏子と活動を共にするようになり、何度も来日の機会があった。ある時、デイヴからカルテット結成の提案があり、僕が信頼する大樹(安カ川)と良人(江藤)に声をかけてカルテットが誕生したんだ。
JT:4人で最初に演奏したのはいつですか。
JK:僕とデイヴは1982年にニュー・ハンプシャーで出会ってるよね。僕と大樹は1991年か1992年に東京で初めて共演した。多分、赤坂のジャズ・バーだったと思う。僕に大樹が良人を紹介してくれたのは、2000年か2001年だと思う。吉祥寺のサムタイムに大樹のバンドで出ているときだった。デイヴからバンド結成の話が出たとき、このふたりしかいないと思った。4人で最初に演奏したのは2003年で、「ニューヨーク東京コネクション」とネーミングしたのは2004年だ。だから、今年は結成10周年ということになるね。
JT:結成したとき10年も続くと思いましたか。
JK:いや、先は見えなかった。
JT:10年続いた最大の要因は何だと思いますか。
JK:音楽的にも、人間的にも相性が良かったことだろうね。一緒に演奏したり時を過ごしたりしたい仲間なんだ。自分を主張する前に、お互いを聴き合って音楽を造り上げることをまず真っ先に考えてる。
JT:演奏する曲は誰が選んでるのですか。
JK:僕とデイヴが多かったけど、最近は大樹や良人の曲も増えてるね。
JT:これまでツアーは何度経験しましたか。
JK:7回かな。
JT:海外にも出ましたか。
JK:ブルーノートNY、NYの北野ホテル、それから周辺の大学や高校で演奏した。すごく受けて嬉しかった。
JT:今度のツアーで期待することは。
JK:いい演奏を披露して、いろんなファンと出会いたいね。初めての場所もいくつかあるし。新しい曲も楽しみにしている。ミュージシャンというのはツアーを通じて音楽的にも人間的にも成長していくものなんだ。今度のツアーもファンと一緒にそうありたいと願っている。
♪ デイヴ・ピエトロ(as)
米マサチューセッツ州出身。1987年からニューヨークのジャズ界で活躍している。1991年と1996年の「セロニアス・モンク国際コンペティション」<サックス部門>のコンクールのセミ・ファイナリスト。ウッディ・ハーマン、ライオネル・ハンプトン、メイナード・ファーガソンの各オーケストラのリード・アルトを経て、1994年から秋吉敏子ジャズオーケストラに入団、リード・アルトとして4作のCDと数々の米国内外のツアーに参加。現在は、世界のトップ・ビッグバンド「マリア・シュナイダー・ジャズ・オーケストラのリード・アルトを務めている。 他に、ジョー・ロバーノ、レイ・チャールズ、ハリー・コニックJr.、ライザ・ミネリーなど数々のビッグネーム・アーティストとの共演経験を持つ。リーダーとして7作のCDをリリース。 音楽教育にも熱心で、ノース・テキサス大学で音楽教育学士号、ニューヨーク大学でジャズ作曲の修士号を得ている。また、セルマー楽器のスポンサー・アーティストとしてアメリカ全国の学校で何百回ものワークショップ/コンサートを行っている。現在、ニューヨーク大学ジャズ学部助教授を務めている。 詳しくは:http://www.davepietro.com/ |
♪ 江藤良人 (えとう・よしひと ds)
グルーヴの深さと絶えないエネルギーを持つことで名声を得た指折りのドラマー。リー・コニッツ(as)やローランド・ハナ(p)を始め、日野皓正(tp)、石井彰(p)などの日本のトップ・プレイヤーと共演。 現在は自己のグループ及び国内のトップ・グループに在籍するかたわら、ソロ・ライヴや様々なセッションで活動中。柔らかくしなやかなシンバル・レガート、繊細さとパワフルさを兼ね備えたエネルギッシュなドラムプレイには熱烈なファンが多い。 詳しくは;http://eto.mockhillrecords.com/ |
♪ 安カ川大樹(やすかがわ・だいき b)
2012年、2013年度JazzPage人気投票でベーシスト部門2年連続1位。小曽根真、大坂昌彦、デイヴ・ピエトロ、アキコ・グレース、松永貴志,川嶋哲郎、小林桂、ウンサンなど100枚を超える国内外のレコーディングに参加。TV、ラジオ等の出演やMt.Fuji、東京ジャズ、南郷ジャズフェス、宮崎フェニックス・ジャズフェス、台中ジャズフェス、ニュージーランド・クライストチャーチ・ジャズフェスを含む国内外のジャズ・フェスティバルにも数多く出演。ジャズのフィールドだけにとどまらず、金子飛鳥ストリングスアンサンブル、加古隆「色を重ねて」公演、テレマン交響楽団との共演、2012、2013年2月 岡山ルネスホールにて N響首席コントラバス奏者吉田秀氏とのジョイント・コンサートなど幅広い活動も行なう。2008年、ジャズレーベル「ダイキムジカ」設立。卓越した音楽センス、技量、スケールの大きなオリジナル曲で、今、最も注目を集めているベーシストである。 詳しくは;http://yasu.office-gen.com |
♪ ツアー・スケジュール
5/30(金)古河市アップ(NYTC3)
〒306-0023 茨城県古河市本町1−10−12 エースビル
電話: 0280-32-4713
5/31(土)宇都宮ゴージ(NYTC3)
〒321-0941 栃木県宇都宮市東今泉1-2-6
電話 090-3472-8316
6/2(月)Cooktail Kubota
〒940-0064新潟県長岡市殿町2−5−4 ニューツチダビル5F
電話:025-836-3055
6/4(水)NHK Session収録
〒150-0081渋谷区神南2-2-1
6/5(木)赤坂 B flat
〒107-0052東京都港区赤坂6-6-4 赤坂栄ビルB1
電話 03-5563-2563
6/6(金)静岡・ライフタイム
〒420-0852 静岡市葵区紺屋町11-1(浮月楼内)
電話:054-250-0131
6/8(日)昼:高松:デイヴ・ピエトロ/ジョナサン・カッツ SWJOとゲスト出演
6/9(月)大阪・ローヤルホース
大阪市北区兎我野町15-13 ミユキビル1階
電話:06-6312-8958
6/10(火)名古屋・ラブリー
名古屋市東区東桜1-10-15
電話:052-951-6085
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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