#  130

山口真文(サックス奏者)

山口真文 (ts,ss)

1946年9月1日、佐賀県唐津市生まれ。
楽器は中学校のブラバンで吹いたトロンボーンから。慶大KMPニュー・サウンド・オーケストラでアルトを担当、テナーを手にしたのは1971年に参加したジョージ大塚クインテットから。1974年、自己のカルテットを結成、1978年に発表した2作目の『リー・ワード』(Teichiku)で「新宿ジャズ賞」を受賞。1976年、後にアルバム(『Galaxy』CBSソニー/1979)発表に際して「ザ・プレイヤーズ」を名乗る鈴木宏昌(p,key)の「コルゲン・バンド」に参加、日本のジャズ・フュージョン界を席巻する。1981年、NYで『MABUMI』(Trio)を録音、帰国後、ジョージ大塚の「マラカイボ」に参加、5年間、演奏と作曲で活躍。現在は自己のカルテットを中心に活動中。最新作は、『イヴニング』(Spice of Life)。
*オフィシャル・サイト:http://www.mabumi.com/

Interviewed by Kenny Inaoka via e-mails in October, 2014.
Photo:Courtesy of Mabumi Yamaguchi

Intro:
11月5日、「反逆のジャズ」シリーズ(販売:ユニバーサル・ミュージック)の1枚として再発される代表作『MABUMI』を中心にサックス奏者山口真文さんに語っていただいた。
録音は、1981年ニューヨーク、エンジニアはデイヴィッド・ベイカー。共演は、ケニー・カークランド(p)、ミロスラフ・ヴィトウス(b)、トニー・ウィリアムス(ds)。プロデューサー、ジョージ大塚。初出は、旧トリオレコード。
*反逆のジャズ:
http://www.universal-music.co.jp/rebel-jazz/product/pocs-9314/


♪ 作曲も演奏もウェイン・ショーターに大きな影響を受けた

JT:このアルバムは、1981年3月の録音ですが、真文さんのキャリアのなかではどのあたりに位置するものですか?
真文:プロとして活動しだしたのは1970年あたりからで、ファースト・アルバムは1976年、セカンドは1978年ですから、『MABUMI』は3枚目のリーダー作となります。

JT:オープナーの<タレイア>ですが、真文さんのアルバムとしてはソプラノとエレピでちょっと意外な気がしました。オーソドックスにテナーとピアノで来るかと思ったのですが?
真文:<タレイア>のメロディーはどうしてもソプラノの音域でないと映えないと思いました。いま考えると、エレピはピアノでも良かったのかもしれません。一曲目にもってきたのは、この曲が曲として一番よかったからです。

JT:この曲は録音自体も1曲目に録音したのですか?
真文:それは覚えていません。

JT:たしかにアルバム全体のイントロとしては入りやすいかも知れませんね。
真文:そうですね。

JT:2曲目の<メリー・ゴー・ラウンド>は、テナーですが、ブラジル系のリズムですね。この曲はどういうイメージで作曲されたのですか?
真文:この曲のコードは4種類しかなく、それをぐるぐる回していく中で熱い演奏になっていく曲です。やはりブラジルのサンバのリズムが最適でした。

JT:ウェイン・ショーターにインスパイアされた部分もありますか?
真文:作曲も演奏もウェイン・ショーターには大きな影響を受けています。

JT:もちろんトニー・ウィリアムスのソロも念頭において、ですね?
真文:<メリー・ゴー・ラウンド>はテンポが速いですから、ドラム・ソロにはうってつけですね。

JT:<イリュージョン>は、またソプラノに戻ってジャズ・フュージョン的な作りですね。
真文:この頃は、考えていた曲は圧倒的にジャズ・フュージョン的なものが多かったです。

JT:一方で日本的な情感も醸し出されています。
真文:意図したわけではありませんが、そういう曲が生まれてきました。

JT:この曲は「ザ・プレイヤーズ」での経験が生かされていますか?
真文:「ザ・プレイヤーズ」は本気で面白かったですから、この曲に限らず演奏面でも色々影響は出ていると思います。

註:「ザ・プレイヤーズ」;故鈴木宏昌(p,key)が1976年に腕っこきのスタジオ・ミュージシャンたち、松木恒秀(el-g)、岡沢章(el-b)、市原康(drs)に山口真文(ts,ss)を加えて結成した「コルゲン・バンド」が、ドラムスを渡嘉敷祐一に替え、1979年CBSソニーからのアルバム・リリースに際して「ザ・プレイヤーズ」と改称、日本のジャズ・フュージョン界を席巻した。

JT:<クリアウエイズ>は唯一トニーの楽曲で、1985年の『Foreign Intrigue』(Blue Note)という自身のアルバムでも再演していますが、これは真文さんがトニーに作曲を依頼したのですか?
真文:僕というよりレコード会社が偉大なトニーに対して敬意を表すために作曲を依頼したのだと思います。

JT:初めて譜面を見たときはどんな印象でしたか?
真文:難しい曲だなと思いましたが、リハーサルで音を出してみると僕の大好きなサウンドでした。

JT:悠雅彦さんがライナーノーツで、「この全体のラインの平坦な進行には<ネフェルティティ>を初めとするかつてのマイルス=ショーター・コンビの音楽の再現を思わせるものがある」と書いていますが、そのあたりは意識していましたか?
真文:リハーサルの時<ネフェルティティ>に通じるものを感じて、あのようなニュアンスでメロディーを吹いたら、もっとクリアーに吹くようにとトニーに言われました。

JT:<ヴォイセズ・オブ・ザ・ナイト>は、テナーによるバラードですが、この曲の狙いは?
真文:気取って言えば“静寂”でしょうか。

JT:最後の<ウィザード>は、オープン気味のソロが続いて盛り上がりますが、これは意図的に構成されたものですか?
真文:これはテナーでラフに動きまわりたいという思いの曲です。











♪ 雲の上の人達と一緒に本当に演奏できるのだろうか?

JT:真文さんはこの録音の時36才ですが、1945年生まれのトニーと同い年ですか? ミロスラフは、1947年生まれ、カークランドが1955年生まれで、一回り下ですが、カークランド以外は3人同世代なんですね。トニーは早熟で19才の時にすでにマイルスと演ってましたから..。どうですか、同年代の連中と演奏しているという感覚はありましたか?
真文:正確には、僕は1946年9月生まれですから録音時は34才でした。トニーとミロスラフは同世代と言っても僕が学生の頃から聴いてきた、それも特別憧れていた人達でしたから、同年代という感覚はまったくなくて、雲の上の人達と一緒に本当に演奏できるのだろうか?という感じでした。

JT:カークランドはジョージ(大塚)さんの『マラカイボ・コーンポーン』(Trio/1978)のリリース記念コンサートにプロデューサーだった菊地雅章さんがNY から送り込んできて、真文さんもその時共演していますね。菊地さんは高く買っていましたが、真文さんはどんな印象でしたか?
真文:当時たしかカークランドは23歳だったと思いますが、音がきらきら輝いていて、あまりの美しさに感動しました。ジョージさんのコンサート・ツアーの合間にレコーディングがあったのですが、(『ガーディアン・エンジェルス』Trio/1978)休憩中にカークランドが一人でピアノを弾いているのでそばに寄って聴いていたら「この曲知ってる?」と弾き出したのがジョー・ザヴィヌルの<A Remark You Made>でした。ウェイン・ショーターのテナーやジャコ(パストリアス)のベース、ピーター・アースキンのドラムなどソロ・ピアノなのに「ウェザー・リポート」が丸ごと聴こえてくるような演奏で鳥肌が立ちました。しかも僕一人だけのために演ってくれたのですよ。

JT:彼はその後、スティングやマルサリス兄弟に認められてレギュラーに抜擢されましたが、43才で早世してしまうんですね。死因は鬱血性心不全でした。真文さんは彼をどのように評価していますか?
真文:歴史に残るジャズ・ピアニストになったと思います、技術的なものを超えて音楽の美しさや楽しさを表現できる人でした。





♪ ミロスラフは僕の人生での最大のカルチャー・ショック

JT:ミロスラフも『マラカイボ・コーンポーン』に参加しているのですが、このころ宗教に凝っていましてね。抹香臭い曲を書いてきて。しかし、非常にスケールの大きい傑出したベーシストですね。真文さんとの相性はどうでしたか?
真文:ミロスラフはもう完全にジャズ・ベースの歴史上重要なべーシストだと思います、相性うんぬんではなく、僕は彼の大ファンです。

JT:ミロスラフとは、その後、ジョージさんのバンドを中心にいろいろ遊びましたね。『ガーディアン・エンジェルス』(1978)、『マラカイボ』(1979)。彼が「ウェザー・レポート」のために書いた<アメリカン・タンゴ>(『ミステリアス・トラベラー』1976)を「マラカイボ」で録音した時は感激しましたね。ミロスラフの強力なベースに文字通りぶっ飛びました。
真文:僕の人生での最大のカルチャー・ショックはミロスラフ・ヴィトゥスです。

JT:彼はアスリートとしても傑出していて、あの身体ですから、競泳選手のチェコ代表としてオリンピックに出場するチャンスがあったのですね。最終的にはミュージシャンを選んだと言ってました。ところで、NYは初めてだったのですか?
真文:そうです。

JT:ジャズクラブには出掛けましたか?
真文:ニューヨーク在住の大野俊三(tp)さんに案内してもらって、3、4軒のライブハウスに聴きに行きました。夜中、とあるレストランに入ったら客が誰もいないところで、 ロン・カーター(b)とシダー・ウォルトン(p)がデュオで仕事をしてたのには驚きました。

JT:この録音を通じてもっとも印象に残っていることは何ですか?
真文:何と言っても自分の実力のなさを痛感しました。

♪ 死ぬほどスイングしたい!

JT:真文さんの実家は水産業でしたね? 音楽に興味を持ち出した時期ときっかけは?
真文:父親が音楽好きで小学生の頃から家にレコードがたくさんありました。自分でやるようになったのは、中学でブラスバンドに入ってからです。トロンボーンが最初です。

JT:慶応ではビッグバンドで活躍されたのですよね?
真文:KMPニュー・サウンド・オーケストラというサークルでアルト・サックスをやっていました。

JT:プロ・デビューしてまもなく「新宿ジャズ賞」を受賞しましたね。
真文:はい、その頃しょっちゅう一緒に麻雀をやっていた「新宿タロー」の秋山太郎さんが僕を推薦してくれたらしいです。

JT:ジョージさんのバンドが長いのですが、ジョージさんの人間性と音楽についてはどう思いますか?
真文:ジョージさんは音楽に対する姿勢が強く一貫していて、とにかく「SWING」です。僕のオリジナル曲もジョージさんのドラムで命が宿ったようになり、とても感謝しています。

JT:「ザ・プレイヤーズ」での経験は?
真文:とても素晴らしい5年間でした。あんなにタイトなリズム・セクションに乗って吹くのは快感でした。メロディーとリズムの関係などとても勉強になりました。またコルゲンさん(故鈴木宏昌)には本当に良くして頂きました。2001年に亡くなられた時はとても悲しかったです。

JT:3年前にリリースされたアルバム『Evening』は、真文さんの魅力が全開したアルバムだと思いますが、演奏はもちろん真文さんの楽曲の素晴らしさは誰もが認めるところです。作曲をする時にとくに意識していることはありますか?
真文:メロディーが成り立っているかどうかが問題になります。もちろん自分の判断ですが。

JT:最後に夢を語って下さい。
真文:死ぬほどスイングしたいです!

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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