#  252

田村夏樹・藤井郷子4バンド同日ライブ
2010年1月9日 @新宿ピットイン
reported by Mariko OKAYAMA

演奏:

GATO LIBRE:
田村夏樹(tp) 藤井郷子(acc)
津村和彦(g) 是安則克(b)
First Meeting:
田村夏樹(tp) 藤井郷子(p)
ケリー・チュルコ(g) 山本達久(ds)
Satoko Fujii ma-do:
田村夏樹(tp) 藤井郷子(p)
是安則克(b) 堀越彰(ds)
藤井郷子オーケストラ:
早坂紗知・泉邦宏(as)
松本健一・木村昌俊(ts)
吉田隆一(b)

田村夏樹・福本佳仁・渡辺隆雄・城谷雄策(tp)
はぐれ雲永松・高橋保行・古池寿浩(tb)
藤井郷子(p) ケリー・チュルコ(g) 永田利樹(b) 堀越彰(ds)

曲目:
Gato Libre:1.Dune and Star 2.Waterside 3.Mountain,River,Sky 4.Memory of Journey 5.Shiro
First Meeting:全曲インプロヴィゼーション
ma-do:1.February~Locomotive~Feburuary 2.Desert Ship 3.Nile River 4.Ripple Mark 5.曲名未定 6.Spiral Staircase 7.To the Skies
Satoko Fujii Orchestra Tokyo:1.Negotiation Steps 2.Zakopane 3.Trout 4.Tropical Fish 5.Zee 6.Inori
アンコール/飛不動

photo by
櫻井一也

田村夏樹、藤井郷子率いる4バンド一挙同日ライブは、ほぼ5時間にわたる長丁場だったが、立見の出る盛況。田村の「淡々と盛り上がらず切ないかもしれない」GATO LIBREを皮切りに、ネルス・クラインをゲストに迎えてのノイズ系インプロFirst Meeting、開かれた「窓/間」をめざすSatoko Fujii ma-doと続き、つわもの居並ぶ藤井郷子オーケストラで締めくくった。

ゆるくシンプル、ときどきセンチなGATO LIBRE、是安・堀越と組んだmadoの上質なセンスの間にはさまれ、乱気流に呑み込まれたようなキリモミ状態、宇宙に投げ出された放心を味わったのはFirst Meetingの生み出す音場である。

クラインの参加で、スケールがまるきり変わった、というのが実感だ。ずんずん押し寄せる低音の旋回に身体ごと巻き込まれ、あるいは後頭部から後ろへ思い切りひきずりこまれ、連れていかれる。どこへ。光と闇の底の底、原始はたまた原子の次元。上昇・落下の音の渦、混流(濁流ではないあたり、やはりメンバーの感覚の鋭敏を知る)にただ揉みしだかれて自失、なのである。これまで聴いたクラインなしの4人では、ここまで音場が深く重くはならなかったから、ゲストの力は大きかった。基本的に金属音を好まない私は、ときおりザリザリ皮膚を引っ掻かれる不快さに苛立つのだが、それをもねじふせるパワーには降参であった。

こういう音のただなかにあると、自我、などという意識が飛んでゆき、なにもかも溶解、形という境界がなくなる、というのは、それこそが、ジャンルを超えて、音楽という人間の営為に宿る本質なのだろう。その根源を無理矢理剥き出しにして見せるのが、ノイズ系とでも言えようか。

音楽とは何であれ、とどのつまり、ノスタルジックな追憶と、曖昧かつ過激な未来の両者の上を、現在を賭けて往還するものであれば、はからずもそのことをこの4バンドは提示して見せた。その意味で、トータルな音楽体験ができた希有な5時間であった。

最後に登場のオーケストラでの仲間受けパフォーマンスは、私には興ざめだった。これだけ密度の濃い流れであれば、リラックスなどというサーヴィスは不要。圧倒的なホーンの音柱でそのまま天まで吹き上げてくれれば、それで充分だ。

いずれにしても、どんなシーンでもぴたりとその場にはまる田村・藤井の力量はただならない。音楽の背骨はまっすぐで、あとは臨機応変自由自在のノマドぶりには、外来文化の吹きだまりたる日本の「融通無碍」がそのまま映し出されているようだった。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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