#  254

Andrea Centazzo & John Zorn
February 28, 2010 @The STONE New York, NY
Photo & text by Nobu Stowe (須藤伸義)
Special thanx to The STONE, NY(www.thestonenyc.com

アンドレア・チェンタツォperとジョン・ゾーンasのコンサートが、ゾーンの本拠地=The STONE(NY)で行われた。 アンドレアと、彼の自主レーベル=ICTUSレコードについて、本誌では、横井一江さんがリポート済みだ(http://www.jazztokyo.com/yokoi/v17/v17.html)。残念ながら“イタリア出身の前衛音楽家”という肩書きが災いしてか、日本やアメリカで、彼の音楽に対する認知度は高いとは言えない。しかし、スティーブ・レイシーss、デレク・ベイリーg他との有機的連鎖が光る共演、ヨーロッパ有数の即興楽団=ミテルローパ・オーケストラ主宰、前衛からニュー・エイジ的な音まで包括する電子音楽の探求、ソロ・パーカッションからオペラ作品まで創出する作曲能力等、創造的音楽を愛する人々に、是非とも探求して欲しいミュージシャンだ。 “ネイキッド・シティ”や“マサダ”他でのグループ活動、自身のソロ・プロジェクト、TZADIKレーベル主宰等、70年代から現在までフロント・ラインで活躍しているジョン・ゾーンについて、余り説明の必要は無いと思う。アメリカ各地のローカルなクラブで開かれている無名ミュージシャンによる“即興演奏”に一度でも立ち会えば、彼の影響力の大きさが簡単に把握できる。

アンドレアとゾーンは、1978年に、当時のNYダウンタウン・シーンの新進気鋭ミュージシャン達(トム・コラcello、ユージン・チャドボーンg、ポリー・ブラッドフィールドvln、近藤等則tp)と『Environment For Sextet』(ICTUS)という、重要作を制作している。その後、色々接点がありそうな二人だが、今回のコンサートまで機会が無かったようで、何と32年(!)ぶりの共演。因みに『Environment For Sextet』は、ICTUSレコード30周年を記念して発売された12CD組のボックス・セットで『The New York Tapes』としてリマスター/ボーナストラック付で新装再発されている。現在では、単独CDとしても購入可能:http://www.ictusrecords.com/30/covers/127.html

前日に大雪に見舞われたニューヨークだったが、二人の再会に駆けつけたファンで、The STONEは、ほぼ満員になった。小さなステージに、アンドレアの特異なセット −フレーム・ドラム、各種シンバルとMalett Katという電子音をトリガーできるデジタル・マレットからなる−が存在感を示している。暖かい拍手に迎えられた旧友達は、お互いの顔色を窺(うかが)うように演奏を始めた。

全体的には、ゾーンが変幻自在に繰り出すアブストラクトなフレーズを、アンドレアが呼応しつつ昇華させて行く展開が基本だった。最初の演奏には、多少のぎこちなさが感じられた。しかし、それは、フリー・インプロヴィゼーションの最重要課題 “聴く”という修練を重視している現れでもあったのだろう。勿論、30年以上経って進化した、現在の自分達のプレイを見極める必要もあった筈だが...。演奏が進むにつれて、音楽の滑らさは増して行き、テレパシックな音の交換が“自由な空間”を創造する。

パーカッション・ソロの後、ゾーンが、マシュー・バーンをゲストとしてステージに呼んだ。バーンは、イギリス出身の若手(1977年生まれ)ピアニストで、リーズ大学で教鞭を執るかたわら、ヨーロッパを中心に精力的な活動をしている様子。初めて聞いたピアニストだったが、二人のマスター・インプロヴァイザーの世界に邪魔立てせず、直ぐに入り込み、独自の空間を確保した事から推測するに、かなりの実力者。

芳醇な世界を造りあげ、コンサートを締めくくったトリオ演奏だったが、個人的には、もっとデュオを楽しみたかった。幸い、継続的にデュオを続ける意向との事なので、期待したい。

このコンサートと前後して、アンドレアは、エリオット・シャープgとのデュオ公演/録音、デイブ・バルーtp(STEEPLE CHASEからのリーダー作品や藤井聡子等との共演で活躍)、アキレ・スッチreeds(http://www.jazztokyo.com/interview/v75/v75.html)、ダニエル・バルビエロb及び筆者自身pからなるクインテットでの録音等をこなした。スティーブ・レイシー派のサックス奏者=ジョー・ダードゥーロとの新ユニット“The Way”の作品と共に折りをみて紹介してみたい。

Andrea Centazzo (www.andreacentazzo.com)
John Zorn (www.myspace.com/johnzorn)
Matthew Bourne (www.matthewbourne.com)
ICTUS Records (www.ictusrecords.com)
TZADIK Records (www.tzadik.com)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
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by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

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#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

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