#  258

Mizuho & タイガー大越“Stars and a Moon”Live
2010年3月26日 @house of jazz Sapporo
reported with photos by 原田和男


Mizuho(vo)
タイガー大越(tp、flgh)
安斎亨(p)
飛澤良一(g)
飯田雅春(b)
黒田佳広(ds)



ミューズの神が降り立ったMIZUHO & Tiger大越のライブ

 MIZUHOの3作目にあたるボストン・レコーディングは MIZUHO & Tiger Okoshi『Stars and a Moon』と題されたコ・リーダー・アルバムだ。
コンセプトは「心の中にある宇宙の子守唄」。3月26日の発売当日に記念ライブが、折りしも北海道グルーブキャンプで来日中の本アルバムのアレンジャー/プロデューサー/プレイヤーでもあるタイガー大越を迎え、札幌のMIZUHO自身の本拠地で夫君が主宰するhouse of jazzで開催された。
日本の二大ジャズ誌での絶賛レビューも手伝ったのか、白い恋人がウェルカムとチラチラ舞う中100名を超す観客を迎え、期待と興奮の熱気に溢れるなか開演された。

 リズム・セクションは、安斉亨/ピアノ、飛澤良一/ギター、飯田雅春/ベース、黒田佳広/ドラムスといった、何れも北海道のジャズ・シーンをリードする逸材で、MIZUHOとは気心の知れた仲間たちだ。
カルテットをバックにブルース・ナンバー<Women be Wise>で幕開け。深くベルベットに包み込まれるブルースの世界!50年間ひたすらジャズを聴いてきたが、日本にもこのような歌手が誕生したのかと鳥肌が立った。以下当日の演奏曲目の順を追ってみる。<Over the Rainbow>、<Corcovado>、<My Favorite Things>、<Here, There and Everywhere>(ビートルズ・ナンバー)、<Stars and a Moon>(タイガー作曲・作詞)とアルバム収録曲よりの選曲。どの曲をとっても、タイガーの斬新なアイディアが施された絶妙なアレンジで独自の音楽世界を現出している。どこをとっても耳新しい”音楽”といったら良いだろうか!タイガー曰く、“優れたミュージシャンたちがただ演奏するだけではなく、それぞれのエモーションがひとつに溶け合って深く味わいのある「音楽」になることが大事なんだ” というように、彼のアレンジは原曲に飛翔力を持たせ、それを正にがっしりとサポートしているのだ。

 以下2曲はTiger Quintetによる演奏。<枯葉>、<My Funny Valentine>、 こんなに深みのあるおおらかで心温まるまるホーンは聴いた事が無い!
ラッパ吹きの端くれの私がため息をついてしまう。

 そして、<Memories of You>、<Dream>、<Waltz for Debby>、<Time for Us>(映画『ロミオとジュリエット』のテーマでニーノ・ロータが作曲。これを取り上げたのが凄い)、<Spain>と休憩無しで鳴り止まぬ拍手のなか<翼>で幕を閉じた。みんなの心と楽器が一体となって、美しい至上の音楽を織り成したすばらしいライブだった。ありがとう!

 それにしてもMIZUHOとは!!タイガーとのソリでの超絶テクニック。と書いてしまったが、テクニックを感じさせない凄さ。絶妙のスキャット!
涼やかで、凛とした唄。豊かな声量(ラッパで言えば、ピッコロからフリューゲルホルンまで自在に駆け巡る)、毅然とした意思の強さを併せ持っているMIZUHOにはまったく脱帽だ。
ブームでマス・プロダクションされるボーカルが多い中、MIZUHOは、レコード・レビュアー氏がいみじくも書いた”このボーカルは実にすばらしい!”という通り、まさにミューズの神に魅入られた僕らの宝である。

 熱気をクールダウンさせようと開けたドアから飛び込んだのは一面の銀世界。ちらつき始めた雪は、季節外れの大雪となって降り頻っているのであった。
*関連リンク:
http://www.jazztokyo.com/newdisc/457/mizuho.html

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
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