#  264

Chico Hamilton & Euphoria
@ An die Musik / Baltimore, May 15. 2010
reported & photo by Nobu Stowe / 須藤伸義















チコ・ハミルトンとアンドリュー・ヒルが、1993年に録音したデュオ作『Dream Come True』(Joyous Shout:2008年発表)をレビューした際「10年程前に、ハミルトンのグループメEuphoriaモをミシガン州アンアーバーのジャズクラブで観た時も70代半ばとは思えないフレッシュなプレイを聞かせてくれた。その後、ライブを観る機会に恵まれていないが、ハミルトンのコンサートに出かけてみたいと思う。」と書いた。

去年発売された新作『Twelve Tones of Love』(Joyous Shout)を聴く限り、まだまだチコは、元気な様子。しかし、彼(1921年生まれ)の年齢の事を考えると「もう1度、観れるかな?」と少し不安に。そんな折、筆者の地元=バルチモアのAn die Musikでライブを行うという情報。勿論、喜んで出かけてきた。

同行するグループは、チコが80年代中期より率いている“Euphoria”。エリック・パーソンやカリー・デ・ニグリスと言った(80年代当時)の革新派ミュージシャンが在籍した、初代Euphoriaは、前衛性をも視野に入れた刺激的なポスト・バップ演奏を聞かせてくれた。現メンバーは、前述のアンアーバーでのライブにも参加していたエレクトリック・ベース奏者のポール・ラムジーを除き、全員、パーソン達よりも1−2世代若いミュージシャン。チコが、長年教鞭を取っているニュー・スクール・オブ・ミュージック(ニューヨーク)の精鋭卒業生が中心。

筆頭格は、各種サックスとフルート担当のエリック・シュワム。彼は、2001年発表の『Foreststorn』(Koch)よりパーソンに代わりEuphoriaに加入。前任のパーソンに比べオーソドックスなスタイルだが、良く歌うフレージング、臨機応変に反応する能力、でなかなか聴かせてくれる。主にコンガをプレイしていたジェレミー・カールステッドは、本来ドラマーで、2006年発表の『6th Avenue Romp』より参加。『Twelve Tones of Love』発表後のメンバーは、二人。ギターのニック・デモポウロスは、ウェス・モンゴメリー譲りのオクターブ/親指奏法でグルービーな曲で特に活躍していた。フルート担当の佐伯麻由は、島根県出身、広島のエリザベト音楽大学卒業後、東京で活動した後、2008年よりNY在住という経歴の持ち主。クラッシック専門だったが、大学時代に聞いたチェット・ベイカーの演奏に魅了されて、ジャズの世界に。日本では、フルート奏者兼ヴォーカリストと活躍していたそうです。今秋にKitano Hotel(ニューヨーク)でライブ録音/アルバム発売の予定が入っているそうなので、期待したい。

チコのドラミングからは(10年前と違い)年齢を感じさせられたが、繊細なブラシュ・ワーク、エレガントなシンバル・レガート、的を得たフィル等、一聴で分かる個性は健在だった。ライブ前に、往年の名曲/名演〈ブルー・サンズ〉で有名なマレット・プレイは披露してくれなかったが...。 演奏曲は『Twelve Tones of Love』他の近作より、幅広い曲想の楽曲を披露してくれた。ロマン・ポランスキー監督/カトリーヌ・ドヌーブ出演の映画『反撥(Repulsion)』他の音楽を担当したチコは、最近でも意欲的に作曲をしている。各曲の間には、“物忘れ”を逆手に取ったようなMCで会場を沸かせていた。

まだまだ、末永く活躍して欲しいものである。

Chico Hamilton (www.myspace.com/chicohamilton)
Evan Schwam (www.evanschwam.com)
Mayu Saeki (www.myspace.com/mayusaekiflutevoice)
Nick Demopoulos (www.nickdemopoulos.com)
Jeremy Carlstedt (www.jeremycarlstedt.com)

JOYOUS SHOUT Records (www.joyousshout.com)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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