#  274

「東京JAZZ 2010」特集
<GROOVE>メイシオ・パーカー
2010年9月4日 昼公演@国際フォーラム Hall D5 reported by高谷秀司 Hideshi TAKATANI

photo by (c)中嶌英雄/(c)Hideo Nakajima
提供:東京JAZZ事務局

進化の存在証明「東京JAZZ」
第一楽章「メイシオ・パーカー」

 生物学の世界では、進化論なのかそうではないのかという論争は、随分前からある。今回の「東京JAZZ」は、音楽における進化論を証明した場所である。
新しい音楽進化の展示場といっていいと思う。

 その最たる、四つのバンドについて展開する。

 まずは、まずは、第一楽章 興奮を抑えてメイシオ・パーカー殿

 メンバーのリズムがひとつの宇宙の中で融合している。音が飛び出した瞬間
     ベイシック・ファンク:101。
 もう、たまらない・・・気がついたら、鳥肌が立っている。鳥肌は嘘つかない。
 ジャーマル・トーマスのタイトなドラム。スキート(ロドニィー“スキート” カーティス)のベース。
 そして、何もしないギター、ブルーノ・スペイト。得もいえぬ夢見心地の三位一体のグルーブ GROOVE・・・別項「オーストラリア音楽紀行」で詳しく説明しています。参照してください。
 ブルーノ(ギター)が何もしていないのではない。三人のグルーブ(バンドのグルーブ)があまりにも一体化していて、ギターのファンキィーすぎるカッティングが、聞こえないのだ。
 このグルーブの中心はやはりベースのスキートだ。スキートは怒るかもしれないが(「俺はブーツィーとスタイルが違うとか・・・・」、もう、完全にブーツィー・コリンズを超えている。ブーツィーはいわずと知れたJB(ジェイムス・ ブラウン)のバンドのベーシスト。69年、70年、スライ&ザ・ファミィリー・ストーンのラリー・グレアムに影響されたファンク・ベーシスト。

 思い起こせば、このファンクという世界で、いつから、リズムの重点がベースに移ったのだろう。
 それを考えるには、JB(ジェイムス・ブラウン)の『セックス・マシーン』のアルバムがいいだろう。二枚目の本当のライブではなく、一枚目のスタジオ・ライブでは、ブーツィーのベースがふんだんに聴ける。
 <セックス・マシーン>や<ターニット・ア・ルーズ>。ブーツィー(b)&ジャンボ(ds)のコンビを、67年頃のバーナード(b)&クライド(ds)、そして、チャールズ(b)&ジャンボ(ds)のコンビと聞き比べると、いかにベースに重点が移ってきているかがわかる。

 メイシオ・パーカーの今のリズム隊、スキート&トーマスは、これらの歴史的なベース+ドラムのコンビネーションを見事に包含し、凌駕し、超克している。
 楽曲<ABC>(「ジャクソン5」のカヴァー)におけるスキートのベースは、とんでもない野太いファンクなのに、日本の邦楽、雅楽の世界にある揺らぎがある、和の世界の間合いがある。オリジナルのベースラインの3倍ぐらい駆け回っているにもかかわらず、サウンドの底辺をしっかり支えているスキートの職人としての離れ業。
 このスキートのベースに絡みつくようにジャーマル・トーマスのドラムが、へばりつく。ウィル・ブールーウェアのキーボードが、これしかないという絶妙の間合いで、サウンドを支える。
 勿論、メイシオ・パーカーのSAXは、メロディよりも、メロディのもつリズムそのもので、ぐいぐいひっぱっていく。
 コリ−・パーカー、ネタ・ホールのヴォーカルは、神事の弔いのように、メイシオの声やSAXに呼応し、反応する。
 ロン・トゥリーのトランペットとデニス・ロリンズのトロンボーンは、従順な下僕のように、壮大なリズム川の淵を支えている。ソロで出てくると、その従順さとは裏腹に大暴れをする。
 デニスは手に負えない・・・・。

 メイシオの決まり文句 “WE LOVE YOU” を連発するエンディング。もう至福の喜びである。

 真っ黒のサングラスをかけて、レイ・チャールズを歌いきったあと、サングラスをとったメイシオの純粋でお茶目な眼差しがたまらない・・・・・・・・・・。

高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。 http://www.takatani.com

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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