1973年にニューヨークに拠点を移して以来、マイルス・デイヴィス(tp)、ギル・エヴァンス(kb,cond)とのコラボレーションや、ゲイリー・ピーコック(b)、ポール・モチアン(ds)と共に新たなジャズの地平を切り拓いてきた菊地雅章は、ニューヨークのジャズ・シーンでも、孤高の存在として高い評価を獲ている。その菊地は、長年患ってきた肺疾患が悪化し、この7月から１０月半ばにかけて、ニューヨーク市内のマウント・サイナイ病院での療養を余儀なくされた。菊地の治療費の一助にという趣旨で、ヴィレッジ・ジャズ・シーンの名物プロデューサー、ラス・ムストの呼びかけで去る9月27日、旧ヴィレッジ・ゲイト跡のクラブ「ル・ポアゾン・ルージュ」で、ベネフィット・コンサートが開催された。
　ミュージシャンの間で、尊敬と愛情を集める菊地の旧友や若手が多く集まる。ビリー・ハート(ds)、ジーン・パーラ(b)らヴェテランから、ルー・ソロフ(tp)らギル・エヴァンス・オーケストラの同僚、グレッグ・オズビー(as)、ジェイムス・ジナス(el-b)、マーク・ターナー(ts)らの中堅、イーサン・アイヴァーソン(p)、トーマス・モーガン(b)、そして増尾好秋(g)らが、スタンダード・チューン、マイルスの＜Shhh／Peaceful＞などを演奏し、午後10時から午前2時までセッションに興じた。
　日本でも同趣旨のコンサート企画があり、本田珠也(ds)、杉本智和(b)、菊地雅晃(b)らが中心になり来年２〜３月開催を目標に、準備中という。
　菊地雅章の一日も早い、シーンへの復帰が待望される。（ときわ・たけひこ／フォト・ジャーナリスト／在NY）