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北とぴあ国際音楽祭 2010
生誕300年記念
ペルゴレージ・フェスタ 夭折したナポリの天才作曲家
reported by 多田雅範 photo by 林 喜代種

□2010年11月21日(日)
@北とぴあ つつじホール

『カウンターテナー
ミネッチャ、ペルゴレージを歌う』

カウンターテナー:フィリッポ・ミネッチャ
ヴァイオリン:伊左治道生、廣海史帆
チェロ:懸田貴嗣
チェンバロ:平井み帆

□2010年11月23日(祝)
北とぴあ さくらホール

『Viva! ペルゴレージ 〜合唱曲の真髄』

指揮:長谷川冴子
合唱:東京少年少女合唱隊、L.S.O.T.シニア&ユース・コア
ソプラノ:古嵜靖子
アルト:志田理早

〈古楽器アンサンブル〉
ヴァイオリン:川原 千真、小田瑠奈、三輪 真樹、小池吾郎
ヴィオラ:幡谷久仁子
チェロ:田崎瑞博
ヴィオローネ:寺田和正
オルガン:能登伊津子

タルティーニ《スターバト・マーテル》
パレストリーナ《スターバト・マーテル》
ペルゴレージ《ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調》
ペルゴレージ《スターバト・マーテル》

北とぴあ「さくらホール」は、合唱の聖地なのだ。これまでも何度かここで合唱のコンサートを聴いてきたが、合唱の響きが一番しっくりくるホールだと思う。

生誕300年というナポリの作曲家ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710−1736)、26才結核で夭折、が、最後に書き上げた「スターバト・マーテル」はその後バッハが編曲してもいることからも、当時の音楽の完成形を示していたと言われている。

当時はカストラート、去勢された男性歌手、が、全盛の時代にあって、ペルゴレージにはカストラートに向けて書いた曲もあり、21日はカウンターテナーのフィリッポ・ミネッチャがそれらを歌った。この1981年フィレンツェ生まれのカウンターテナー、さすが本場の声量、技巧、表現力を感じることはできたが、この歌い手のリサイタルであれば多彩な楽曲でその才能の拡がりの輪郭を窺うこともできただろう、似た曲想が続くというか、羊羹ばかり食べてる気持ちに・・・金太郎飴とは違うんだな・・・なった。伴奏も、アップテンポでは気にならないけれど、この歌い手のタイム感覚との調和というか、有機的なしなやかさには届かなかった。リハ不足は否めまい。カストラートの表現は現代に再生することは不可能という考えもあるし、かなりマニアックな聴取する教養が必要なコンサートかもしれない。新国立劇場のオペラでは歌詞がステージ脇に表示されて理解を助けるが、それもなく、実際この音楽祭では労働者の町、合唱の町、北区のみなさんが初めて接するオペラ歌手であったりもして、うす暗い客席で老眼鏡ごしに一生懸命歌詞カードに目を走らせて座っていたおじさんおばさんが多かった。それらを総合して、・・・どうなの?

23日の合唱はすばらしいものだった。これはもう指揮者の長谷川冴子さんの取り組みの熱意、合唱団の研鑽の勝利だと言っていい。コンサートの前半ではタルティーニとパレストリーナの「スターバト・マーテル」を、後半でペルゴレージの「スターバト・マーテル」という構成。さすが、さくらホール、合唱団の響きがじつにいい。目玉のペルゴレージの「スターバト・マーテル」は、曲としては12のブツ切りで、ありがたいものではあっても盛り上がりや高揚に欠ける。それを、指揮者と合唱団の有機的な営みとして観客は息をのんで聴いた。この充実した聴後感は、コンポ−ザーによるものではなく長谷川冴子さんによるものだ。企画は彼女によって救われていたとおいらは思う。

作曲家ペルゴレージについて、映像付きレクチャー、そしてシンポジウムという日程まで用意されていた、国際音楽祭の要件なのか、は、わからないが。2日間聴いた限りでは、ペルゴレージは見いだされなかった。こういうマニアックなのはどこかの音楽大学が学生向けに共催するか、もしくは、本場ものの演奏家をごっそり持って来てしまわないと、難しいのではないか。

日本の合唱のシーンの厚さに気付いたのは最近だ。日本には独自に合唱を深化・新化させてきた作曲家もたくさんいる。手弁当で活動している素晴らしい合唱団もたくさんある。いま”現在”のことばで、合唱を通じて表現される・表現されつつある作品もたくさんあるように想像している。わたしはそういうものを、このホールの音響で聴きたい。

コンサートのチケットを切ってもらって入場すると、北区の名産トキハソースや御菓子司中里などに出会うことができた。惹かれて購入した。どちらも美味しい特別な思い出になった。






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