#  311

unia asia/SMILE For You
2011年 1月26日 @座・高円寺
reported by 高谷秀司 photo by ヒロ伊藤

"unit asia"
三好“3吉”功郎 (g)
コー・Mr. サックスマン (sax//Thailand)
則竹 裕之 (ds)
テイ・チャー・シアン (p/Malaysia)
一本 茂樹 (b)

初めて聞くユニットであった。

にもかかわらず、懐かしい。とにかく音が懐かしい・・・。そして、サウンドが懐かしい。
しかしアジアだからではない。もちろん、5人とも素敵なアーティストだ。

なぜ懐かしいと思うのか。これが悩ましい・・・。

その理由は。
このユニットは千載不易(せんざいふえき)と不易流行の統合を図るユニットだからである。
千載不易・・・永遠不変のもの。
不易流行・・・いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも新しく変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であること。

誰しも演奏家、ミュージッシャンは色々な人に影響を受けて育っている。

「〜〜あがり」という表現がある。この表現はどこかに影響を受けた原点があるという意味。私は、よく、「もともとブルーズあがりですんっでっ・・・」なんて言い方をする。まさしく幼少の頃からブルーズに浸水し、それを耳コピーして育った

私のことを称して、誰が付けたか知らないが、日本を代表するブルーズ・ギタリストという言い方がある。こそばい呼び方である。なぜブルーズ・ギタリストというカテゴリィーで日本を代表するのか・・・・。
もともとブルーズは、アメリカのミシシッピで〜〜〜〜なんて言い始めるときりがない・・・。
しかし、もはやそんな難しいことを言ってる場合ではない。
クロスオーバー コラボレーション フュージョン。どの言葉も、もはや死語である。音楽領域がクロスするのは当たり前。だから、コラボするのも当たり前。
ブルーズ・ギタリストが、邦楽やったって、雅楽をやったって、おかしくはない。
そういう意味では、このユニットの5人のミュージッシャンは、アジア人であるにもかかわらず、実にアジアらしくないテイストを持ったアーティストたちである。
西洋音楽あがりのアーティストたちである。そうは言ったって、西洋音楽の影響を受けていないアジアのミュージッシャンがいるわけがない・・・。
とくにギターの三吉さんの気持ちはよくわかる・・・。高円寺 JIROKICHI ファミリィー出世頭。
ギターのフレーズも、作曲も、アレンジも、懐かしい・・・。
三吉のフレーズを追いかけていくと、ここはスティーブ・ルカサーの要素、  ラリィー・カールトンの要素、バディ・ガイ風味・・・。
アレンジは、カシオペア的、ウエザーレポート的、渡辺香津美TOCHIKA的・・・矢沢栄吉・・・ みたい。
曲は・・・・ほとんどがどこかで聞いたフレーズの組み合わせ。この懐かしさはたまらない・・・。とくにギター小僧としては・・・。

決してけなしているのではない。聞いている私自身がすでにアジアらしくないのだ。だから懐かしく感じる。

日本を含めたアジアという地域は西洋文明(音楽)を取り込むことによって成長してきた。その成長と同時にアジアらしくなくなってきた。

このユニットは混沌としたものを融合していく最中だと思う。
酒の製造でたとえるならドブロク、それも超一級のドブロク。このドブロクが醸造になり、本醸造になり、吟醸、大吟醸になる。そして、本当にアジア音楽の大吟醸になる。
そのためには、テイ・チャー・シアンがリーダーをやってみるのがいい。
現に、今回の演奏の3曲目<The Art of Wind-up−Alarm Clock>、4曲目<The Sea Outside My Window>などは楽曲として見事な可能性を示している。

中東から来たゲスト・ミュージッシャン3人が出てくると(Mr.Amro Salah/ピアノキーボード、Mr.Hany Badair/タブラ パーカッション、Mr Latyth Soliman/ナイ)、実に見事なアジアン・テイストを発芽させる。今回のステージで7曲目にやったAloma Salahが書いた<Resova Dolina>楽曲は実に見事。
今後は、アジアの「ゆらぎ」をどう表現するかだと思う・・・。

不変の真理を知らなければ、基礎が確立せず、変化を知らなければ新たな進展がない。
本当のアジアらしさとは何か。喉元に白羽を突き付きつけられている気がする。

私は、ベースの一本さんの笑っているのかいないのかわかりづらい笑顔が好きだ。ここに次のunie asiaのサウンドを導く鍵があると思う・・・。

Smile For You
* 関連リンク
『UNIT ASIA/Debut!〜from Southeast Asia Tour 2008』
http://www.jazztokyo.com/newdisc/557/unit_asia.html
『ユニット・アジア/スマイル・フォー・ユー』
http://www.jazztokyo.com/five/five730.html



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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
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・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
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