#  316

東京都交響楽団第711回定期演奏会
『日本の管弦楽の名曲とその源流(12)』(別宮貞雄プロデュース)
2011年1月24日 @東京文化会館
Reported by 佐伯ふみ Photo by 林喜代種

東京都交響楽団
指揮:ヨナタン・シュトックハンマー

【曲目と独奏者】 1)西村朗:サクソフォン協奏曲「魂の内なる存在」
(サクソフォン:須川展也)
2)ジョリヴェ:ハープと室内管弦楽のための協奏曲
(ハープ:吉野直子)
3)西村朗:幻影とマントラ
4)ジョリヴェ:ピアノ協奏曲
(ピアノ:永野英樹)

2006年から都響が1月の定演としておこなってきた「日本管弦楽の名曲とその源流」のシリーズ最終回。3人のソリストがそれぞれ第一級の演奏者であり、曲目も力のこもった聴き応えのある作品ばかり。ボリューム満点のフルコースを食べたような充実感を残したコンサートであった。

コンサートの前のプレトーク、西村朗氏と片山杜秀氏の対談も合わせて聞いた。短い時間ではあるが、このプログラム構成の意味、シリーズのプロデューサー・別宮貞雄氏のこと、曲の特徴と聴きどころ、ソリストたちについてと、非常に要領よくポイントをあげた内容。聴衆にとっては、コンサートの楽しみをいっそう深くするのに役立ったに違いない。

こうしたトークの試みだけでなく、配布されるプログラムは、いつもながら充実していて読み応え十分。特に今回は、別宮貞雄氏プロデュースのこのシリーズを回顧する記事(片山氏と、都響の新チーフ・プロデューサー・守屋新氏の対談)が掲載されていて、それを読むと、聴衆を育て、同時に、聴衆と共にオーケストラを育てていこうとする、楽団の一貫した姿勢を見ることができて、改めて感動する。現代音楽の作品のみのコンサートに、これだけ多くの聴衆が集まり耳を傾けている姿は、改めて、驚異である。他の単発の現代音楽コンサートとはまったく異なる意義と広がりを持つ試みに、改めて敬意を表したい。

西村作品2曲とジョリヴェ2曲を組み合わせた構成は、おそらくは池内友次郎門下であった西村との「フランス」をキイワードにしたつながりであろう。また、ジョリヴェが特に若い頃に示していたオリエンタリズム、原始主義の志向にも、西村作品との接点がある。これは別宮氏自身による解説ではなく、冒頭のトークにおける片山氏の指摘である。

冒頭と最後を飾る、西村のサクソフォン協奏曲、そしてジョリヴェのピアノ協奏曲が、ソリストの圧倒的な存在感もあいまって、強い印象を残した。特にジョリヴェの代表作であるピアノ協奏曲は、ジャズのイディオムを使った華やかで興趣に富む音楽。長く内容の濃いコンサートにいささか疲れ気味だったかもしれない聴衆が、改めて身を起こし、乗りにのって聴き入るような、情熱的な名演だった。永野英樹氏の冷静と情熱を合わせもったような演奏スタイルも非常に印象的。「別宮シリーズ」の最後を飾るにふさわしい、盛大な拍手喝采であった。

2011年度以降も、「日本管弦楽の名曲とその源流」のシリーズは継続される。別宮氏を引き継ぐプロデューサー、一柳慧氏。20世紀後半の音楽を中心にしたプログラムとなりそうだ。楽しみである。









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