#  339

YAS-KAZ - Sabar Night
2011年5月5日 @KIWA
Reported by 稲岡邦弥 Photo:相本 出

YAS・KAZ
ワガン・ンジャエ・ローズ
ラティール・シー
エラージ・アリア・ンジャエ
アブライ・ンジャエ・ローズ

久しぶりにYAS-KAZを聴いた。2004 年以来だから、7年振りということになる。この間YAS-KAZは、リハーサル・スタジオを確保するなど次なるステップへの旅立ちの準備に勤しんでいたようだ。ひとところに留まっているアーチストではない。1974年、東京芸大の打楽器科を卒業後(ちなみに、東京芸大打楽器科からはジャズ・ドラムの先達白木秀雄や山下洋輔トリオでヨーロッパを席巻した森山威男など一筋縄ではいかない卒業生を輩出している。先年物故した指揮者の岩城宏之も中退ではあるがOBである)、フリージャズの世界に飛び込んだ。ジャズがもっとも刺激的な時代だった。当時の記録としては、阿部薫とのデュオ『阿部薫+佐藤康和デュオ/アカシヤの雨がやむとき』(1971)が残されている。在学中から前衛舞踊の音楽制作にも係わっていたようだが、バリを経てアフリカに辿り着いたのは何時頃のことか定かではない。
2004年の「グローバル・アート・パーティ」ではいろいろな楽器が登場し、多彩なサウンドスケープが展開されたが、今回は文字通り「サバール・ナイト」。
参加したのはそれぞれ日本での活動歴も長いセネガルのサバール奏者(ラティールは主に肩から下げる太鼓ジェンベを演奏)たちである。やはりセネガル出身のユッスー・ンドゥールを聴いたことがあるファンは強力なグルーヴをたたき出していたババカルのサバールを思い出すに違いない(ちなみに、YAS-KAZも最初のサバールはババカルから手に入れたらしい)。打楽器だけで構成されたバンドは一聴シンプルに聴こえるが、バチで叩く位置を微妙に変えたり素手でミュートをかけることなどでとてもニュアンスに富んだ音を叩き出している。文字通り、トーキング・ドラムと名付けられたタマ同様、もともと会話をするために考案された楽器ときけばうなづけるだろう。タマの使い手アブライは、タマでいくつかのフレーズを叩き出し、聴衆に同じフレーズを歌うように仕向ける場面も。聴衆との一体化ということでは、ラティールがタマを小脇に挟んで客席をまわり、<上を向いて歩こう>を1フレーズづつマイクに向かって歌わせるというライブハウスならではの演出もあった(50席)。しかし、打楽器アンサンブルの醍醐味はやはりリズムの響宴だろう。異なるリズム(例えば3拍子と4拍子)が同時併行するいわゆるポリリズムの中で、さらに連符があったりシンコペーションがあったり、テンポが変わり、突然ブレーキがかかってキメに入ったり...と本当に手に汗握るスリルの連続。“3種類のパターンが16分音符ずれてインターロックしていて”、“6/8のパターンでソロ回しが来たり”、“ソロをするとき、64音符までのタイミングで”(共に、YAS-KAZ氏の解説から抜粋)など、気の遠くなるような複雑かつ微妙なニュアンスを内に含むアフリカの伝統音楽。客席を離れて踊り出す女性もいたが、これだけのリズムを得て身体を客席に縛り付けておけるわけがない。
なお、当夜は玉川高島屋際のライブスペース「KIWA」のオープニング・イベントで、YAS-KAZは当分ここをホームグラウンドにサバールのクリニックなども予定しているようなので、折りにふれスケジュールをチェックしてみよう。
参考リンク:
http://www.jazztokyo.com/newdisc/komado/kazenodensetu.html
http://www.jazztokyo.com/live-report/v19/v19.html
http://www.jazztokyo.com/newdisc/komado/305.html









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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
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#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

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