#  391

ジャコ・パストリアス・ビッグバンド
2011年11月20日 @Blue Note TOKYO
Reported by 関口登人
Photos by 山路ゆか(提供:Blue Note TOKYO)

ジャコ・パストリアスのジュエリーボックスをあけてみれば

35才で亡くなり今や伝説となったベーシスト、作編曲者ジャコ・パストリアス。彼の生誕60周年を祝うトリビュート・バンドの公演を楽しんだ。
ジャコはエレクトリック・ベースによって(アコースティックも含めて)ベースの新たな可能性を提示し、実際多くの後進に影響を与えている。確かにウェザーリポートやパット・メセニー、イアン・ハンター、ハービー・ハンコックといったサイドに回るギグや初期の自身のアルバムでの、驚くべきテクニックの天才ばかりが強調、評価され、彼の持つ別の一面の評価が今ひとつと感じている人は少なくないはずだ。それがジョニ・ミッチェル、ボブ・ミンツァーなどとの仕事を経て得た、素養のあった作・編曲への目覚めである。その成果はジャコ・パストリアス・ビッグバンド、ワード・オブ・マウス・ビッグバンドに結実していった。ベーシストとしてのこだわりは持ち続けながら、ユニット全体としての「音楽」表現により一層惹かれていったのだと思う。それもフュージョン世代ならではの聴くものと聴かせるものが共に満足できる極上の「音楽」を。 
今回の公演にそんな彼の遺志を今に繋ぐ試みの果実を期待していたのはいうまでもない。ピーター・グレイブス(ldr)、ピーター・アースキン(ds)、ゲイリー・ケラー(ts)といったジャコとの共演経験のあるメンバー、エド・カーレ(ts、as)、マイク・ビニョーラ(bs)など、ジャコと同じマイアミ出身メンバーが多いのも特徴的だ(ゲイリー・ケラーもマイアミ出身)。演奏が始まってみるとそのサウンドは圧倒的で、オリジナルよりメンバーは少ないにもかかわらず、リッチで確かなオーケストレーションではノリにノリ、ピーター・アースキン、リチャード・ボナなど手練たちによるソロがそれに続き走る。中でもテナーのエド・カーレはスタッカートを多用するフレーズで大車輪(古ーッ)の活躍、大いに沸かせた。意外(?)なことに20代から30代前半と思われる若者たちで満席状態の客席は大盛り上がりに。衒いや小細工のない簡潔でマッシブ、そしてストレートなアレンジが効いているのだろう。ウェザーリポート(ジョー・ザビヌル)からの2曲、ボブ・ミンツァーがアレンジを手がけたケイパーの「インビテイション」などを混じえながら、ジャコのオリジナルを中心にほぼ切れ目なく演奏が続いた。リチャード・ボナやオールラウンダーのピーター・アースキンはバッキング、ソロともバンドが目指す豊かな色彩をいっそう濃いものに染め上げることに成功していた。そしてその結果は何よりモダンだった。
Jazz Tokyoの前月号のCDレビューで触れたマイアミ・サクソフォン・カルテット 『FOURTIFIED』のメンバー3人が参加していて、彼らのアキュレイトでパワフルな演奏を間近で確認し楽しませてもらったのも収穫だった。
マイアミは熱いのかも。(COJAC会員)  













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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
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#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
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オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
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INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
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CONCERT/LIVE REPORT
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