# 410 |
ナイジェル・ケネディ 「バッハ meets ファッツ・ウォーラー」 |
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ナイジェル・ケネディ(violin) |
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イギリス出身のヴァイオリニストのナイジェル・ケネディが5年ぶりに日本のステージに立った。会場となったオペラシティの大ホールには、後方や2階に少なからぬ空席が広がる。だが、そうした空席が示唆する今回のプログラムへの戸惑いと、演奏終了後のほぼすべての聴衆によるスタンディング・オベーションとの落差が、図らずも、このところのケネディの演奏活動の本質を物語っているように思われる。 |
1920年代から40年代のアメリカで一世を風靡したジャズの巨匠ファッツ・ウォーラーを取り上げたコンサート後半は、前半の高揚感を引き継いで始まった。とはいえ、演奏自体がエネルギッシュなのではない。ケネディの他のメンバーは、グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団の首席を務めた後、ジャズでの活躍が著しいベーシストのヤロン・スタヴィ、ポーランド出身の名ジャズ・ギタリストのヤレク・シュメタナ、そしてスネアドラム1つを前にした同じくポーランド出身のドラマーのクシシュトフ・ヂェジッツ。その4者が繰り出すプレイは、その体躯を思わせるファッツ・ウォーラーのあけっぴろげな音楽を、ユーモラスさを保持しつつ、洗練された軽やかなものとして提供する。気分を高揚させるのは、アンサンブルの妙味だ。ウォーラーの演目は、スキップするようなリズムが楽しい「How Can You Face Me Now?」に始まる4曲。ピアノ曲として書かれた「Viper’s Drag」では、マイナー調の響きに織り込まれた遊び心をドラムが巧みに引き出し、アップテンポに転じれば、ヴァイオリンが腕の冴えを見せる。小気味よいリズムが特徴の「Honeysuckle Rose」は、バロック音楽風に始め、ギターとヴァイオリンが交互にソロを取りながら、両者の息の合った二重奏へ。「I’m Crazy ’Bout My Baby」では、快調に飛ばしながら、ヴァイオリンが、グリッサンド、刻み、ハーモニックスを駆使してフレーズを多彩に弾き分け、喝采を呼ぶ。ケネディは、バッハとウォーラーの共通項として「ハーモニーの達人」ということを挙げていたが、メロディラインを歌うことよりもアンサンブルに目配りすることで、猫の目のように表情を変えるウォーラーの音楽の楽しさに、聴衆の耳を自然と開かせた。バッハでの手の込んだ仕掛けも、そのウォーミングアップとして貢献。 |
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