#  411

ベニー・モウピン・クインテット
2012年2月23日 @Blue Note, Milan
Reported by 稲岡邦弥
Photo by 相本 出

Benni Maupin Quintet:
Bennie Maupin (b-cla,ts,ss,fl)
Hania Chowaniec-Rybka(vo)
Michal Tokaj(p)
Michal Baranski(b)
Lukasz Zyta(ds,perc)

駆け足出張でジャズ・クラブ見参などの余裕とてなく、ましてやミラノにブルーノートがあるとの情報すら持ち合わせてはいなかった。ランチを共にしたカメラマンのロベルト・マゾッティ(日本で通っているマソッティは誤りとの本人の弁)に誘われ駆け付けた次第。そこは、宿泊していたムッソリーニのファッシズムを象徴する巨大な中央駅脇のホテルからタクシーでわずかの距離にあった。ステージを囲む三方に2階席があり、200席ほどはあろうか、スペースは充分確保されているものの造りは極めてカジュアル。1階を中心に7割ほどの客が席を占めていただろうか。
ベニー・モウピンといえば、マイルスの『ビッチェズ・ブリュー』や『オン・ザ・コーナー』、ハービー・ハンコックのベストセラー『ヘッドハンターズ』でお馴染みだが、ECMの『マリオン・ブラウン/ジョージア・フォウンの午後』に続くリーダー作『ロータスの宝石』以降は、友人のピアニスト、オスカー・デリック・ブラウンを通じてロサンジェルスで活動していると、風の噂に近い消息が頼り。
彼がまず手にしたのはバス・クラリネット。スタンドに楽器がセットしてあり、マウスピースに口を寄せて吹く。その後もバス・クラの演奏が中心で、テナーとソプラノ・サックスに持ち替えたのはそれぞれ1曲ずつのみ。しかし、このバス・クラが良かった。淡くしかし陰影に富んだセピア色の世界が静かに広がる。これはベニー自身の人生(1940~)の投影だろうか。イメージが重層的に積み重ねられ微妙なニュアンスを醸し出す。その世界を妖しく包み込むかのようなハニアのヴォカリゼーション。ランチ前に立ち寄った大聖堂、ステンドグラスを透過した陽光がフロアに写し出した淡い色模様を思い出す。若いピアノ・トリオがシーンをリードするとネガが一転ポジに反転する。雲間を出た太陽が一気にきらびやかな陽光を取り戻す。
ステージで楽器を片付けるベニーにNYの共通の友人の名を告げると初めて笑顔を見せた。確かな人生を歩んだ古希を過ぎた男の美しい笑顔だ。
マゾッティに同行する同年輩の男性はマルチェロ・ロライ、ジャズ番組のDJをしていると自己紹介した。NYダウンタウン・シーンのボス的存在、ウィリアム・パーカー(b)のインタヴュー集を出版したというハードコア。「イタリア語で出版したのは失敗だった」と自嘲気味に言い訳をした。
客席は年配客が多く、昼間街中で見かけたたくさんの日本人観光客の姿はついぞひとりも見かけなかった。(稲岡邦弥)  







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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
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